2024年4月21日日曜日

二次創作小説「その耳に惹かれて」

その耳に惹かれて
この作品は、2022年10月29日 12:14に投稿された作品です。

~ケモ耳、ケモ耳、見渡す限りのケモ耳天国。
ホロライブは、なんて素晴らしい楽園でござるか!~


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Koyori's Turn

 「ぐっ……」
フブキ先輩が数枚のカードを扇形に広げて歯噛みする。
そんなににらんでも、置けるカードが増えるわけではないんですよねぇ。

 今日の分の収録が思いのほか早く終わって、中途半端に時間が余ってしまったボクらは、スタジオの楽屋でトランプ大会を開いている。事務所からのお迎えはまだ来ない。
今日・明日と同じスケジュールなので、この機会に先輩たちとオフでたくさん遊べる絶好の機会だ。


 「フブキ、置けるの?置けないの?」
「……」
ミオ先輩に促されても、フブキ先輩はまだうなっている。それもそうだ、ここで負けたら総合最下位が決定、罰ゲームが確定しちゃうから。
「フブキ先ぱぁい、もう諦めましょうよぉ」
「むむむ……パス、です……」
追い討ちで急かして、さすがのフブキ先輩もようやく降参。この七並べのルールは、パス5回まで。6回目のパスを宣言したフブキ先輩は、これで自動的に4位となってしまった。

 「負けた……完膚なきまでに……」
フブキ先輩は手持ちのAやQ、Kを手元に広げ、がっくりとうなだれた。
「あら~、フブキ、今日はツイてないねえ」
「負けが込んでますね、フブキ先輩」
ミオ先輩が自分の手札を横に置いて、フブキ先輩の手札だった数枚のカードを盤面に丁寧に配置していく。とは言っても、端のカードばかりなので、他の人が置けるカードが増えるわけではない。ミオ先輩が体を起こすと、13×4のカードの列が見やすくなった。

 「いろはちゃん、置けるぅ?」
敗北の幕が一段落して、次の順番はいろはちゃん。4人の中で一番パス回数が少なく、手札の残りは1枚。
「フッフッフ……じゃあ遠慮なく、出させてもらうでござるよっ!」
いろはちゃんが、手に持っていた最後の1枚、ハートの6を静かに貼り付けるように置く。
「あっ!?」
ハートの下の方が全然出せなかったのは、いろはちゃんが止めてたのか!
「ぃやったああああ!!!上がりでござるぅぅ!!!」
「いろはちゃん強ぉ!?」
「大貧民もスピードも1位だったよね!すごいすごい!!」
ミオ先輩は目を細めて体を横に揺らす。こよも思わず拍手しちゃった。ゲームはあまり自信が無いと言っていたいろはちゃんも、今日はトランプなので大活躍!
こよもミオ先輩も総合成績はほぼ順位が確定しているから、七並べの手札は置いておいて拍手。フブキ先輩は更に両手をグーにしてテーブルに臥せった。
「強すぎるよおおお風真殿おおおおおおお」
「よっ、いろはちゃん、三冠王!」
「あっぱれ!わぉーん!!」
「ありがと~~でござる~~~!」
やいの、やいの。
いろはちゃん、虫も殺さぬような顔をしながら、戦略に長けた女。holoXの頭脳の座を奪われかねない……!


 ミオ先輩とこよが消化試合を片付け、お楽しみタイム!
「成績発表~~~!!!」
本来はフブキ先輩のセリフだったけど、フブキ先輩との阿吽の呼吸でこよが音頭を取る。
「おっ、このコヨーテ、ネタがわかってるねえ」
「むふふ、当然ですよキツネ先輩」
一度やってみたかったんだよねえ、これ。
いろはちゃんがちょっとビクッと肩をすくめてこよを見る。あっ、通じなかった……?
「あんま気にしないでね。こよもフブキも、『一生のうちに言ってみたいセリフ』がいっぱいあるんよ」
「はあ……、フブキ先輩とこよちゃんは色んな事知ってるでござるなあ…」
ミオ先輩が眉を寄せながら小声で声をかけてくれてる。よかったぁ、フォローお任せします!
物事は勢いが大事。流れを切らないように、声を張る。
「では、優勝者から発表します!優勝はぁ、風真いろは!!あっぱれー!!ドンドンドン、ぱふぅぱふぅぱふぅ!!」
「わー、ぱちぱちぱちぱちぃ」
「よくやったー!」
三人の拍手と称賛に、ちょっと戸惑いながらもはにかんだ笑顔のいろはちゃん。あああ、可愛いいいいい。
「いろはさん、喜びの一言をどうぞ!」
こよはマイクをいろはちゃんに向ける。
「え、えっ、な、なに言えばいいでござるか?」
「何でもいいんだよぉ。言わないと締まらないの!」
いろはちゃんは、いつもはあまり前に出るタイプじゃないけど、強めに押したら協力してくれる優しい所が可愛いんだよねぇ。
「えっ……と、嬉しいでござる!!」
わぁっ、と一層の拍手で讃える。

「では!続いて最下位の発表です!!みなさんお気づきのとおり、フブキ先輩です!!!」
「わー、ぱちぱちぱちぱちぃ」
「やっちまったー!」
ミオ先輩とフブキ先輩が、ワザとさっきと同じようにぱちぱちぱちと拍手しながらリアクション。
「えっ?えっ?」
いろはちゃん、再び困惑。
「ハイ、では敗軍の将、お願いします」
マイクをフブキ先輩へ。
フブキ先輩はわざとらしく神妙な顔をして。
「う~ん、もう少しプレイングに幅を持たせられたらよかったんですがねえ~。来期の活躍を期待したいものです」
「解説かよっ!」
「アハハハハハハハ」
「ふふっ、ハッハッハッ」
きれいなツッコミも決まった。
息ピッタリで気持ち良い。フブミオにこよいろ、大先輩を相手にうまくお話しできるか不安だった時が嘘みたいだ。


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Iroha's Turn

 嵐のような盛り上げ方だったでござる。
こんなに楽しい集まりにできるなんて思ってなかった。フブミオ先輩方もこよちゃんも、本当にすごいでござるなあ。
「ハハハハ…はぁ~笑いすぎて疲れちゃった」
「そうですねぇ~」
「いやあ、面白かった!じゃあ終わりだね!お疲れ!!」
「いやフブキちょっと待て」
そろり、そろりと逃げ出そうとするフブキ先輩を、ミオ先輩が呼び止める。
「え?ま、まだ何かあったっけぇ……?」
「とぼけるな白上フブキ!今回は罰ゲームがあるだろうがあ!」
「ぁ……ぃゃぁ、ヨクオボエテナイナァ……」
振り返る姿勢のまま、変な上擦り方の声で罰ゲームを怖がるフブキ先輩。耳がぴょこぴょこしてて可愛い上に面白い。アイドルとしてこれ以上ない。
「こよ!罰ゲーム内容は何だっけ?」
「はい!罰ゲームは、『優勝者のお願いを何でも一つ聞く』です!!」
フブキ先輩は目を「><」の字にして「ァアーーーー」と声にならない小さな悲鳴を上げる。
可愛い。フブキ先輩。

「優勝のいろはちゃん!」
「はっ、はい!でござる!」
「フブキ先輩に何でも一つ、お願いしていいよ!!」
こよちゃんが手の平で指す先には、両手で頭を抱えて審判の時を待つ白い狐がいた。
元気はつらつのフブキ先輩が弱弱しい姿をしてるのも可愛い。
そのフブキ先輩に、何でもお願いできる??想像してこなかったでござる……。
「いろは、何でも言っちゃっていいんだよ」
「そうそう、まあ、いろはちゃんのことだから、そんなに過激なことは言わないだろうけど」
「オテヤワラカニ……オネガイスルデゴジャルゥ……」
フブキ先輩の人間の方の耳が、真っ赤になっていく。何か恥ずかしいことをされると思ってるでござるか?
改めてフブキ先輩の全身を見ると、全体としては可憐な白髪の女の子だけど、やっぱりケモ耳と尻尾が目立つ。防御体制のフブキ先輩の尻尾は体にぴったりとつき、耳はぴぃんと緊張してる。
よく見ると、耳の先がちょっと赤らんでる。
あそこは、どんな肌触りなんだろう。
ふにふにしてるのかな。
毛でちくちくしてるのかな。

 触りたい。

「ケモ耳を、モフらせてほしいでござる!」

「おぉ~」
「なるほどー」
「み、耳ぃ!?」
ミオこよは完全に他人事だけど、フブキ先輩は大きな声で反応した。こめかみあたりを押さえていた手が、頭上の狐耳の方を隠すように掴む。
「いやあ、実は風真、ミオ先輩もフブキ先輩も、お耳可愛いなあ~っていつも思ってたでござるよ」
「いろは、ケモ耳好きって言ってたもんね」
「そんな!ボクの耳いつも…いや時々…たまぁに触らしてあげてるでしょ?!」
「それはそれ、これはこれでござるよ」
こよちゃんの耳を、数度触らせてもらったことはある。あれはとても良いものでござった……。
しかしケモナー侍としては、世の全てのケモ耳に顔をうずめてみたいと考えるのは自然なことでござる。
「ケモ耳だったら誰でもいいの?!」
「ケモ耳に貴賎なし。全てのケモ耳は平等に尊いでござる」
なぜか抗議してくるこよちゃんに真顔で説明。
十人十色、ケモ耳も三者三様でござる。
「えぇっと……じゃあいろはは、フブキの耳をモフモフしたいってことね?」
「はい!モフりたいです!!」
右腕を真っすぐ挙げて応える。なんだか、元気の良い小学生になったみたい。ケモ耳モフれるなら小学生にも幼稚園児にでも何にでもなるでござるが。我々ケモ耳同好の士は、スポーツマンシップにのっとり、正々堂々とケモ耳をモフることを誓います。
……こよちゃん、そんなに立派なケモ耳を持ってるのに、唖然とされても困るでござるよ。

「フブキ、良い?」
「……あの、耳は……敏感で…」
耳を抱えて半分涙目になっているフブキ先輩に、穏やかに訊ねるミオ先輩。
優しいのに、シャキシャキと話を進めてて、かっこいい。あと耳もかっこいい。
「……でも、ダイジョブ、です……」
「大丈夫?無理してない?」
「…!!」
両手で耳を折りたたんだまま、フブキ先輩は目をつぶってコクコクと頷いてる。
かっ、可愛いいいいい!!
「何あの可愛い生物……」
「でござるなぁ……」
「いじめたい気持ちはちょっとわかるかも」
「別にいじめたいわけではないでござるよ?」


 フブキ先輩がうつむきながら、近づいてきて椅子に座る。
「か、風真殿、どうぞ……」
「それでは、失礼するでござる」
こよちゃんの耳をモフモフさせてもらった時は、お辞儀をする格好のこよちゃんの頭上にかざまが手を伸ばして、ちょっと触るだけだった。
それがこんなにも、堂々とケモ吸いができる!!ケモ耳好きにとって、これほどの幸運はないでござる。
ささやくように、つぶやくように「いただきまぁ~す」と言いながら、フブキ先輩の頭を抱きかかえる。ケモ耳の間のつむじの部分に鼻を近づけると、ちくちくした毛が顔に刺さって、ちょっと痛い。それはしょうがないものとして、スゥゥゥーっと大きく息を吸った。人間とも完全な獣とも違う、複雑な香り。鼻と胸が熱を持ち、かざまの口からため息が漏れた。
フブキ先輩の「あっ…」という可愛い吐息が、かざまの胸に当たる。外野からも「おお、大胆……!」「んっ……」と少し声が聞こえる。でも今は、そんなことより目の前のケモ耳に全集中でござる。
頭の向こう側に回していた手を片方外し、右耳を触ってみる。つまむと、ふにふに、コリコリと中身の軟骨が手に当たる。耳の外側も内側も、硬い毛がびっしり覆っていて、なんだか想像と違う。皮膚が薄い部分のすべすべした感じがあると期待していたけど、色が黒いだけで同じような毛が生えている。
耳の更に奥には、更に多くの毛が生えていて、鼻を近づけるとさっきよりも強くチクチクして、ためらってしまった。

 そうだ、かざまはこよちゃんの耳を想像してたんだ。耳の内側に柔らかな肌がのぞいていて、白くふわふわな綿毛のような毛が密集しているこよちゃんの耳。それをかざまは、いつも吸ってみたかった。でも、フブキ先輩のケモ耳はそういう感じじゃないみたいだ。さっき自分で言ったじゃないか。ケモ耳は十人十色、みんな違ってみんな良いんだって。
右耳を中途半端にさすりつつ、左耳を包むように触ると、また違和感があった。指に当たった金属は、フブキ先輩のチャームポイントのピアス。手全体でケモ耳を感じようとしていたのに、そのピアスに「私は『かざまの』ではないよ」と言われているみたい。
そっかあ。これはかざまのではないのか……。
自分で希望して吸い始めたのに、ヘンなの。

気を取り直して。
耳よりも尻尾の方が、気持ち良い手触りかもしれない。お耳を触っていいなら、尻尾くらい減るもんじゃないでござる、よね?
身を乗り出して、フブキ先輩の背中に張り付いた尻尾に手を伸ばす。


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Mio's Turn

 「か、風真殿、どうぞ……」
「それでは、失礼するでござる」
いろはがフブキの頭をそっと抱きしめる。フブキからすると、いろはの胸が押し付けられてるんだよね。それは、なんだか、特殊な秘密の逢引の現場みたいに見えて、「おお、大胆……!」だなんて声が出ちゃった。
しかし、勝者の権利だ。存分にやりたまえ、いろは。

 改めてだけど、いろはのケモ耳好きはホンモノだったみたい。頭を吸ってみたり、夢中で耳をいじったりして、気持ちよさそうだ。「ねこ吸い」とか「うさ吸い」とか言うし、みんな獣の体臭を嗅ぐのが好きなのかな。かく言ううちもネコはたまに吸う。その後すごぉく機嫌が悪くなるから、本当にたまにね。
「んっ……」
こよりの声。
いろはに見入っていて、こよりの様子がおかしいのに気が付かなかった。
こよりはちらちらと二人を見たり、手元を見たり。両手を組んで何かに耐えているみたい。その握った手は、フブキから漏れる「あっ」とか「ひゃっ」とかいう声があるたびに、強く力が入る。
歯医者にかかったときに、歯が痛むと手に力が入るみたいに。
でも今、こよりが痛んでるのは……心、か……。


 どうすればいいか少し悩んでいると、あれっ?いろはがフブキに覆いかぶさるようにして、背中に手を回そうとしてる?!
「ストーーーーーーップ!!」
たまらず大きな声を出して、いろはの腰を掴む。
「罰ゲームは耳だけの約束でしょ!」
「あっ、バレたでござるかぁ。でへへ」
このタヌキ、ちょっと目を離したスキに何を企むかわかったもんじゃねえな。
引き剥がして、めっ、とやる。
「ふぁぁあ」
一方、いろはの胸から解放されたフブキは、ぽわんとした顔をしていた。頬が赤く、口をぽかんと開け、目線は遠く上方を見て焦点が合っていない。いろはの胸を顔全体で感じていたら、こんなにも魂が抜かれてしまうのか。いろはは美人で清楚で声も可愛くて良い匂いがしそうで……

……ホントにどいつもこいつも……!!
なんだかふつふつと、怒りというか、焦りというか、変なモヤモヤがうちの中に生まれてきてしまった。
衝動的に、フブキのだらしない顔を両手で覆う。これは他人に見せていい顔じゃない。
「フブキ!」
「はっ、ひゃはい!」
「ちょっと、こっち来なさい!いろはは、こよりとお話しして!!」
同期の仲なら、細かい指示をしなくても何とかなるでしょ!
まだ切ない目をしていろはを見つめるこよりに、いろははどんな言葉をかけるんだろう。いろは、鈍感そうだから、ちょっと心配だけど。
「トランプはこれで解散!こより、いろは、また後でね!」
「は、はい……」
「はい、でござる」
フブキのケモ耳を強めにつまんで、強引に立たせて隣の楽屋に連れていく。
「ま、待って、待ってよミオぉ」
「これが待てるかってんだ!」
ああ、心臓がバクバクいっている。フブキがあんな顔するからいけないんだぞ。
一刻も早く、フブキの目を開かせなきゃいけないんだ。

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Fubuki's Turn

 小鳥の鳴き声が響く翌朝。
普段ならまだ眠い時間だけど、昨日と同じ時間でお仕事だから少しはマシだ。
「おはようございま~す」
ミオと一緒に事務所のドアを入る。昨日と同じメンバー、こよりちゃんと風真殿が揃っていた。
「フブキ先輩、ミオ先輩!おはようございます~でござるぅ」
「おはよーこより、いろは」
「こんこよでーす!……ミオ先輩、なんだか今日は……」
こよりちゃんがミオと私の顔を見比べて、いたずらを思いついたようなニヤーッとした目つきになる。
「……ゆうべはお楽しみでしたね?」
「うっぐ!」
即バレ!!?
「あははぁ、まあねぇ」
ミオまで!少しは隠して!!
と言っても、私の服が昨日と同じなので言い訳のしようがない。恥ずかしいやらツッコミたいやら、顔から火が出そうだ。
ミオはつやつやした満点の笑顔でこよりちゃんと見つめ合っている。昨日は久しぶりに、ミオが耳やら尻尾やらいじってきて、大変だったんだからね?私は私で、ミオのふわふわの胸を堪能して天国を味わいましたので文句はありませんけども。
相棒の横顔を見ながら、昨日の私に襲い掛かる狼を思い出す。
ミオに火が付くと、誰にも止められない。昨日は別室に移動するや否や、無言で唇を貪られた。楽屋とはいえまだ仕事場にいることなんてお構いなしに、ミオの熱を直に注ぎ込まれた。風真殿の胸の感触なんて、吹き飛んじゃった。
事務所に移動する間も惜しんで直帰して、ミオの家に泊まって、……
思い出すだけで頬が熱くなる。

 「そ、そういえば!風真殿は昨日あの後どうしたの?そのまま帰り?」
「あぁ~、そのことでござるが……」
今気づいた。こよりちゃんの笑顔も、めっちゃつやつやしてる。ミオと同じだ。
「こよちゃんが急に、かざまに『ボクの耳もモフモフして!』って言ってきたでござる。かざまはもちろん、モフれて嬉しかったでござるが」
風真殿は、てかてか笑顔のこよりちゃんを少し見て。
「お耳触らせてくれても、いつもはホンの一瞬だけなのに、昨日は永遠に触らせてくれたでござる。『好きなだけ触っていいよ』って……。なんでぇ?」
「いろはちゃん」
良い笑顔のこよりちゃんは、風真殿の顔に近づいて言う。
「次にケモ耳をモフモフしたくなったら、『いつでも』、こよに言ってね。『いつでも』、だからね」
「えっ、は、はい」
とびきりの圧をかけられた風真殿は、それでも真意がよくわからず、きょとんとした可愛い表情を浮かべるだけだった。


 「ミオ先輩」
「ん?なに、こより?」
「昨日は本当にありがとうございました」
こよりちゃんは深々とミオに礼をする。風真殿とたくさん仲良くできたんだろうなあ。今後風真殿には手を出さないようにしよう。後がこわい。ミオも、こよりちゃんも。
「おかげで、素直になれました。色々と」
「アハハ…いやぁ、お役に立てたなら何よりだよぉ」
ミオが気恥かしそうに照れて笑う。
普段は皆を包み込むママ、ツッコミやゲラで皆の良さを引き出すバイプレイヤー、しかしてその本性は……

頭上には、ホロライブで一番大きく、存在感のある耳がある。
昨晩は余裕が無くて、ミオの勢いが激しすぎて、手にできなかった黒い花弁。
その耳に惹かれて、思わず手を伸ばしかけた。


 ガチャっと、扉の開く音。
「白上さん、大神さん、博衣さん、風真さん、揃ってますかー?」
「あっ、スタッフさん?」
「揃ってますー」
技術スタッフの人が待ち合い室に入ってきた。
「午前中からすみませーん、では、こちらも移動の準備ができましたので、車の方行ってもらっていいですか?」
「わかりましたぁ」

 手を引っ込めて、その手で荷物を持ち上げる。
私がミオの耳を触ったら、ミオも気持ち良くなるのかな。

でもそれは、今じゃない。
DiscordのDMに『今夜も泊まっていい?』と下書きだけ書いて、送ろうかどうしようか、1日中たっぷり悩んでいよう。

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ホロクリエイター @HOLOcreater0219 の企画第6弾参加作品として、投稿しました。
「朝チュン」テーマ、でもR-18は禁止と言うことで、ボディタッチ程度の作品を考えました。いろはがケモ吸い好きなのでこよいろ、二人だけだと濃密な雰囲気になりづらいのでフブミオも追加しました。かなココも良いけど、フブミオも良いですね。

いつもは『目を「><」の字にして』のような、文章表現以外の書き方はしないのですが、フブキのホロライブでのコメディ的な場面での表情を表現するために、わざとこのようにしました。

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