2019年1月23日水曜日

シェアポテトの話

以下は、2013.9.23のpostの転載です。

シェアポテト(1/3)


「574番を」

僕は、初めて来るマクドナルドで、「見せるクーポン」をスマホで開きながら告げた。390円。この実験には安すぎるくらいの安価である。

フライヤーにはポテトは入っていない。客の少ない深夜は、ストックを作っても売れることなく廃棄されてしまうことがあるからだ。
「ただ今お揚げしますので、席の方でお待ちください」
好都合だ。もちろん、そう言われることを想定して来ている。僕はトイレの入り口の脇、カウンターとは逆に陣取った。なぜここなのかというと、トイレの入り口の脇には低い仕切りがあり、秤を置いても店員が席に来るまで見えないからだ。
僕はまるで不審者のように、チラチラとカウンターの様子をうかがった。
なにしろまるっきり不審者である。シェアポテトの、実際に入れられる量を量るために、秤まで店内に持ち込む者は他にいないだろう。

僕はドキドキしていた。いったい何gのブツが出てくるのだろう。そして、店員は何て言って謝るのだろう。
もし、規定量のシェアポテトが出てきたら、何て言おう。

僕はポテトがこぼれても秤が汚れないように、店内にあるペーパータオルを広げて秤の上に置いた。準備万端である。




シェアポテト(2/3)

カウンターから、トレーを持った店員が出てきた!
僕はすかさずスマホのカメラ機能と、デジタル秤のスイッチを入れる。緊張の時間は、ほんの数秒であった。
「お待たせしました。シェアポテトです」
眼鏡をかけた女性店員が席にトレーを置いて言った。パッと見……少ない。以前、他店で出てきたシェアポテトと同じくらいの量だ。

「すみません、これの上に載せていただけますか?」
用意していたセリフを店員に向けて告げた。店員は少し面食らった感じで(当然と言えば当然だ)、逡巡。
「これの上に。」
重ねて言うと、「はい……」と言って両手でシェアポテトを持ち上げ、スイッチの入った秤の上に載せる。

結果……288g!!!!

僕は目を疑った。他店で聞いておいた規定量は、363gである。
なんと、この店の“シェアポテト”は、規定量の8割を切っていた。

「規定量は何gですか?」
「規定量……ですか?」
「はい」
「聞いてきます」
おいおい、店員、規定量、知らないのかよ……
とはいえ、他店の店員も知らなかった。きっと気にしている人は多くないのだろう。

僕は気にするけどな!!
シェアポテト(3/3)
店員が帰ってきた。

「規定量は、Lサイズが181gなので、倍の363gだそうです」
知ってた速報。
「あの……よろしかったでしょうか?」
「はい?」
想定外のセリフであった。
「規定量よりもだいぶ少なかったのですが、よろしかったでしょうか」


今度はこっちが面食らう方だった。そんな返答は全く予想していなかったからだ。

規定量より少なかったのに、客が満足すると思うのか?
違う、店員は混乱していたのだ。こんなときどうしたらいいのか、マニュアルには書いてないから。
あるいは、できるだけ「クレーム」にならないように、彼女なりに奮闘努力していたのだろう。

「えっと……いいかって言われても、規定より70g以上少ないんで何とも言えないんですけど……」
僕は苦笑しながら、内心どうなるんだろうと不安に思いつつ答えた。
予想しなかった展開に、僕はドキドキしっぱなしである。

するとようやく、店員が想定内の言葉を言い出す。
「すみません、(ポテトを)戻して、きちんと量って持ってきてもよろしいでしょうか」
「あ、ハイハイ、そうしてください」
そう。これが普通の対応である。以前同様のクレームをカウンターで行い、店の量りで量らせた時も、同じ対応であった。
「あの、こちらのポテトは……」
くれるというのか?それとも、破棄してしまうのか?どちらにしても僕の本意ではないので、
「あ、これに継ぎ足してくれればいいです」
「はい、すぐお持ちします!」
そうして店員はカウンターに戻って行った。

再び出てきた店員は、トレーに広告で見せているのと同じくらいの量がぎっしり詰められたポテトを持ってきた。
「さきほどは失礼しました。こちらシェアポテトになります」
深々と頭を下げ、「失礼します」と言って店員はカウンターに戻っていった。
僕も、マクドナルドをおとしめるために来たのではないので、別にクレームを入れたりはしない。
ポテトが好きだから、そして、たくさん食べたいからやってるのである。あとは実験に向ける好奇心だけどなw


その後は普通にポテトを完食し、店を出た。
クレームが出た時のための保険か何かわからないが、カウンターの中で男性店員がさっきの女性店員の後ろにいたが、僕は特に何もせずゴミを捨てて帰った。
もちろん、出禁にはならなかった。


おわり


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