2023年3月12日日曜日

二次創作小説「クリスマスイブの誘拐」

クリスマスイブの誘拐


 この作品は、2021年12月25日 15:44に投稿された作品です。


~いつもは、かなたんはこんなことは絶対にしません。

しかし、誘拐されて、したことだから、しかたないのです。

だから、「誘拐」なのです。~


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 「お先に失礼します」
口々に、社員は職場を後にする。僕もその一人だ。
階段を降り、地下鉄駅までの短い時間は、少しだけ音の出るアプリを起動することができる。
You Tubeアプリを開き、仕事中に通知されたホロメンのチャンネルを巡回する。耐久歌枠、ゲーム配信、スパチャお礼枠。どれも見たい配信だが、スマホのアプリで見ている以上、どれかを選ぶと他の配信を見ることができなくなる。選択って、残酷で、骨の折れる行動だ。
 今年の24日は金曜日で、つまりは仕事をし終えてからホロライブの配信を見るといういつも通りの日を送ることが元々決まっていた。
家に帰っても、特段することは無い。仕事はまだ納まっておらず、土日を挟んでまだ3日間働く必要がある。年末に休みがあるだけ、いくぶんマシだ。今年も「ゆくホロくるホロ」を見て、正月衣装のホロメンを見て、週明け1月3日から社畜の一年が始まる。

 地下鉄駅に入り、階段を降り終わる。定期を改札にTap、2番ホームの定位置に並んだ。
一旦You Tubeアプリを閉じて、Twitterを開く。こちらの通知も、ホロメンのアカウントがツイートすると全部通知される設定になっているので、配信告知やおはようツイート(今、18時だけど……?)であふれていた。
仕事に情熱を燃やす性格ではないし、これといって友人も多くないので、ホロメンのツイートは、ほとんど唯一の関心事だ。
その中で、ある天使のツイートに目が行った。
 「今夜、赤ウパ耐久しようと思ってたけど、時間変更になるかも!ごめんね!」
 かなたんの配信は見たいけど、他にも目を引く配信がたくさんあるので、リアタイの予定はなかった。もしも重要な暴露があったら、切り抜き師さんたちが切り抜いてくれるだろう。
しかし、杞憂民杞憂民のかなたんが、何の説明もなく時間変更……。きっと配信前に何らかのツイートはあるだろうし、それを待つしかないけど、ちょっと気になるな。

 そんな時、新しい通知がポップアップした。かなたんのRT。ツイート主は、全く知らないアイコンで、アカウント名は「dragon_from_USDA」。
 「今夜、天使をさらってやるぜ!!」


               ~クリスマスイブの誘拐~


 一瞬のうちに、何が起こったかを察した。dragon_from_USDAの正体も、天使をさらうという意味も。
TwitterのTLは、一気に沸き上がった。
『配信が無し、了解!』
『熱いねえ!!』
『お幸せに!』
『ついに、かなたんも結婚か……』
僕も、「いいね」を押して、地下鉄の中ではTwitterをチェックして過ごした。

 地下鉄を降り、家路につくと、誰もいない真っ暗な住宅街を歩くことになる。その時間は、少々音が出ても平気なので、潤羽るしあの配信をつけてラジオ代わりに流すことにした。
 「いいじゃん!うまくできたんじゃない?まだまだ作れるよ!」
るーちゃんのお菓子作り配信は佳境だ。パンケーキが一つできあがり、次のもう一枚を焼き始めた。
「んっ?来たかな?……みんな、ちょっと待ってね!待っててくれる?!」
るーちゃんは何も載っていないホットプレートを映したまま、とたたたっとどこかへ走っていった。
たっぷり5分後、再び声が乗った。
「みんなお待たせ~!かなたんたちが来てくれたよ!クリスマスプレゼントだって!!」
コメント欄がざわつく。当然、みんなTLでのかなたんのRTは見ている。
「写真撮ってきたから……これ!ロウソク!!可愛い~~」
るーちゃんの配信に、写真が載せられた。小さなカップのロウソクの上に、天使とドラゴン、そして蝶の絵が置いてある。
るーちゃんは、遠くに呼び掛けるように、マイクから口を離して、「ありがとう!!」と叫んだ。
「かなたんと……お友達が、“キャンドルサービス”って言ってたー。キャンドルサービスって何?」
それで、僕らはみんな、何が起こったのか再び察した。
『結婚式!!』
『かなココ結婚だ』
『るーちゃんキャンドルサービス知らないの?』
『YEAHHHHHHHH』
と爆速で流れていた。
 かなたんが去った後のるーちゃんのコメント欄も、『かなココ結婚』で埋め尽くされていた。
「みんな急にごめんね~。さっき連絡が来て、『遊びに行っていい?』ってきて、『いいよ』って言ってたんだけど、まさかこんなすごいプレゼントくれるとは思わなかったから」
るーちゃんはパンケーキ生地をホットプレートに広げながら、つぶやく。
「るしあ、今ロウソクの火見てる……いいよね、こういうの」


 僕は家にたどり着いて、るーちゃんの配信を見ながらTwitterを更新した。するとdragon_from_USDAのツイートを、かなたんがまたRTしていた。
「死霊術師の家にお邪魔した次は、騎士団長の家だぜ!!」
 TLのみんなも、ノエル団長の配信に移動するみたいだ。
「団長、今日はこれくらいにして……1時間ポッキリですのでね」
団長の配信は、ちょうどマリオカート配信が終わり、スパチャ読みが始まる時間だった。
「あっ、みなさん、少々お待ちくださいね~」
サンタ衣装の団長が動きを止め、また5分後、戻ってきた。
「ただいま~!かなたんたちが来てくれたんだけど、声乗せたくないって言ってすぐ帰っちゃった。気にしなくていいのにねえ」
そう言って団長が配信に載せたロウソクには、天使とドラゴン、メイスの絵が置かれていた。
「聖夜のキャンドルサービスだって!あこがれちゃうなあ。団長も、フレアと……」

 dragon_from_USDAのツイートとかなたんのRTは、その後も続いた。
 「宝鐘マリン@ホロライブ3期生
配信の合間に、天音かなたとその連れがクリスマスプレゼントをくれました
キャンドルサービスって言ってました
てぇてぇですね」
絵文字を除くと意外に落ち着いた印象のマリン船長のツイートには、やはり火のついたキャンドルの写真があった。天使とドラゴン、そしてドクロ君の絵が添えられていた。
 「白上フブキ@敗北はイカが?
天使とドラゴンがキャンドルサービスしに来たぞ!
クリスマスだからってノロけやがってえー
尊い!」
写真には、天使とドラゴンとトウモロコシの絵が添えられている。
 TLは、
『テーブルを回ってるんだ!』
『尊い……これが天界か……』
『は?尊すぎ死ぬ』
『かなココは永遠だよな!!!』
と、歓迎のツイートがあふれ、「かなココ結婚」がTwitterトレンド1位になった。


 ひとしきりTLの盛り上がりが終わると、かなたんからのツイート通知が来た。
「みんなただいま!!!
色違い赤ウパー耐久!!!やるぞおおおおおお!!!!!」
作りこまれたサムネイルで、ポケモン耐久枠が建てられていた。
しかし、かなたんのツイートの履歴を見ると、「dragon_from_USDA」のツイートをRTした履歴は一つも残っていなかった。
「dragon_from_USDA」のアカウントに飛んでみても、「このアカウントは存在しません」と表示された。
 誰もが、おとなしくかなたんの配信を待つしかないのか……と思った。
しかし、配信の数分前、かなたんのTwitterからまたもやツイート通知が届いた。
 「天音かなた ホロライブ4期生
今日は色んなホロメンのところにお邪魔して、すみませんでした。
近くに住む友人が、これをホロメン全員分作ってくれました。
クリスマス中に全員に届けることはできないけど、届けられる分だけ、さっきまでに届けました。
メリークリスマス。」
そう言って、今日のツイートが無かった全員分の、膨大なロウソクの写真がアップロードされていた。
ロウソクの上には、天使とドラゴンに加えて各ホロメンのモチーフが添えられている。

 ただし、一番手前のロウソクには、天使とドラゴンしか載っていない。
その代わり、ロウソクの前に、かなたんの天使の輪と、代紋ピンバッヂ、そして一対のペアリングが置いてあった。

 さあ、23時からかなたんの配信だ。
どんなコメントと、スーパーチャットを投げようか。


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pixivに小説を投稿し始めて、他の人が「企画」というイベント合わせのようなものをしているのを初めて知りました。

グルッグズ・マッドヴラドが主催した「ホロSSクリスマス甘ネタテロ」が目に入り、僕ならやはりかなココと思ったので書きました。この時期はかなココはまだ同居もしていましたから、それを踏襲した内容になっています。

この時期以降、グルッグズの企画やホロクリエイター企画に参加していくことになります。

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