2023年3月14日火曜日

二次創作小説「確かに、お届けしました。」

 確かに、お届けしました。


この作品は、2022年2月14日に投稿された作品です。



~天音かなたと桐生ココのお引越しの一幕です。

現実には、とんでもないタイミングで、とんでもないことになっておりますが、あえて無視しています。


皆さまは、良いバレンタインデー、迎えられましたか?~



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2月12日。
忙しい。忙しい。
配信アーカイブの確認して。
スケジュールの確認して。マネちゃんに送信。
サインは……3日後の僕がやってくれる!後回し!!
箱詰めした段ボールの発送準備して。
あっ、これはまだ発送しちゃダメなやつだった!
ノートPCは一つ残しておきたい。配信したくなったときに困るからね。
マ~ジでやることが多すぎて過去イチ忙しい。
------iPhoneの振動。
Discordの通知だ。誰からだろう。
あっ、ココだっ。
『今忙しいか?』
え……?そりゃ忙しいんですけど……
いやいや、ここは文字通りに受け取ってはいけない。僕は察することができる天使。
ココは、僕が今引越し準備中で、サインも毎日深夜まで書いてることを知ってる。
隣の部屋にいるんだから、「忙しい」ことを知らないはずがない!
と、いうことは!
ココは今すごく重要な話があるはず!!
『ううん、全然!何?』
『部屋行ってもいいか?』
『いいよ』
------扉の開く音。
ラフな格好をして、ココが来た。
「いらっしゃい、ココ」
ココ、なんだかもじもじしてる。手ぶらで僕の部屋に来るときは、いつも、ズンズン入ってくるのに。
「あの……サ」
ココは床を見ながら、両手を体の前でいじったり、しっぽを触ったり、角を触ったり、足踏みをしたりしてる。
「ココ?」
「……!!」
ココの両腕が跳ね上がるみたいに上がって、ココはボクシングのファイティングポーズみたく縮こまった。
「くふふっ!名前呼んだだけでビビりすぎ!」
そんなの、つい笑っちゃうじゃん!
「くふふふっ、ふふふ、それで、ココ、用は何?」
ココはさっきの驚いた姿勢からさらに縮こまって……
「なっ!なんでもねぇ!」
------急いでドアを開け、後ろ手に閉めようとしたドアに尻尾が挟まる音。再度、閉めなおす音。
変なココ。
もじもじしてたけど、目が泳いでたし、たぶん、それほど真剣な話じゃないよね。引っ越し落ち着いたら、また聞く!
------インターホンの音。
あっ、荷物を取りに来た業者さんかな?
早く出なきゃ。
はいはいはーい。
ん?テーブルに小さな紙袋……僕のじゃないし、ココのかな?


「配達よろしくお願いします」
「承りました!」
業者さんに荷物も渡せたし、部屋に戻ろう。
テーブルの紙袋、無くなってる。







2月14日
新居に到着~!
新居で最初にすることは決めてるんだ!当然、配信!!だよね!
『新居に引っ越したよ~!今日は19時から!!』
ツイートもOK!
19時……そういえば、ココ、今日の配信の予定、詳しく聞きたがってたなあ。なんでだろう。
------インターホンの音。
はいはーい。また引っ越しの荷物ね。
あれ?引っ越しの荷物は、さっき届いたので全部のはず。これは何だろう?送り主……僕の名前になってる!?
------包みを開ける音。
えっ?
うっわあああああ!!可愛いチョコレートのお菓子!!
手紙もついてる。
読むしかないよね。

『Happy Valentine's Day!!
直接渡したかったけど、忙しそうだったから宅配便にしたったわ!
先に新居、あっためといてくれよな!』

......!
忘れてた。
忘れてた忘れてた!!
色々、色々全部、見落としてた!!
あんなにココは、僕のこと気にしてくれてたのに、僕は忙しい忙しいって!

------discordのコール音。

「ココ!」
「お~!」
「ごめん!僕、ココのこと放っておいて!」
「なんだよぉ、急に」
「だって!チョコ!!」
「届いたかぁ……日和って渡せなくて、ごめんな。ハハ」
そんな、ココ、僕の方が、悪いのに。
「ココ……!」
いや、でも、僕がココに届ける言葉は、謝罪じゃなくて。
「ココ!!ありがとう!!」

Happy Valentine's Day!!


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クリエーターは、締め切りが無くても作品を書ける者と、締め切りが無ければ作品を書けない者がいます。僕は後者です。

バレンタインデー企画時には、同居中のかなココが一緒に同所に引っ越すということが語られていました。しかしその当日、かなたんはコロナ感染を発表。奇しくも借り始めた新居にセルフ隔離生活となってしまいました。

テーブルに置かれた紙袋。伝えきれない愛が、恥じらいという名の包装紙に包まれているのです。

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