2022年9月19日月曜日

二次創作小説「ココ、僕と歌おう。」

ココ、僕と歌おう。

ココとかなた、夢うつつ。

 この作品は、2021年3月18日 23:50に投稿された作品です。



~実在のアニメソングを題材にしています。念のため、歌詞をほとんど削っています。。~


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 かなたは気付いた。

これは夢だ。

だって、僕とココが一緒にカラオケに来ることは無い。僕やすいちゃんがいくら誘っても、ココが来たことはない。



 僕とココは8人部屋の普通のカラオケボックスにいる。僕がよく使う店のものだ。部屋の四辺のうち二辺にソファが並んでいて、ソファの無い所に壁と、カラオケの機械が置いてある。部屋の中央に机があり、予約機械や料理のメニュー表が置いてある。ココは僕の左側に座って、何か歌ってる。夢だからか、歌声はよく聞こえない。

僕はいつもどおり壁のコンセントに携帯の充電プラグを差し込んで充電した。

「おめぇ、次何歌う?」

ココの声。いつの間にか、ココは歌い終わっていたみたい。

まあ、いいや。せっかくカラオケに来たし、歌おう。

「き、み、を、の、……予約」

超超有名アニメ映画のエンディングに流れる歌。日本人なら大半が知っている歌で、ココも知っているはずだ。



 「~~」

僕が歌っている間、ココは無表情でカラオケの機械のモニターを眺めている。日本語の歌詞が表示されて、歌い終わった部分は色が変わっていく。英語のテロップとかを流す方法、無いのかな?


「ル~ル~~ル~」

メロディが切り替わったときに、つい主旋律側ではなくコーラス側の音程を歌ってしまう。当たり前だけど、ルルルだなんて、カラオケの機械には表示されてない。主旋律には歌詞があるもんね。

ココが首をかしげながら、こっちを見てきた。「歌詞違わない?」と思ってるかもしれない。

同じような経験は、何回かしている。たいていは、けげんな表情をされたまま終わる。まれに、ごくまれに、主旋律をかぶせてくれる人もいる。


でも、僕はココにはそれを期待しない。お互いに、あまり多くを期待しないのが僕らだから。今までもそうだったし、これからもそうだ。

だから、僕はココの方をちらっと見ただけで、その歌詞が本来のものであるかのように堂々と歌う。

「つめこ~んで~」

サビに入っても、メロディではなく低い音程のパートを歌う。学校の合唱では、「アルト」パートというけど、イタリア語で「アルト」は「高い」って意味らしい。なんか不思議。逆だよね。


ココは、聞いたことのない音程はあきらめて、僕の声を聞くことにしたようだ。歌い甲斐があるっていうのかな。一心に僕の歌を聞いてくれる人がいると、がんばって歌おうという気持ちになる。それがココならなおさらだ。僕の歌をほめてくれて、好きだって言ってくれて。へい民のみんなには悪いけど、僕の一番大事なファンだ。



 歌い終わる。

ココの拍手。少しくすぐったいけど、さすがに慣れた。

「オメー、これ普通の歌?じゃないよな?」

「そうだね、合唱用の音程。普通の主旋律、メインメロディを歌ってる人の裏で、僕はこっちを歌うの」

「ふうん」

ココが合唱をやるとしたら、ソプラノかな、アルトかな。ソプラノも行けると思うけど、声が少し低いから、アルトの方が似合うかな。歌に苦手意識があるみたいだから、練習は必要になるね。まずは苦手意識を取らなくちゃ。


「かなたん」

「何?ココ」

ココはあさっての方を見ながら、僕の名を呼んだ。ココが恥ずかしがる時の仕草だ。かわいい。

「その、合唱っていうの?私たちも………できるんか?」

「~~~~!」

言った。小声だけど、カラオケボックスのCMの音に負けないように、確かに言った。僕の頬が熱くなる。

「できるよ!できる!!ココ!嬉しい!!」

僕はたまらずココの右腕をつかんでぶんぶんと振り回した。大好きなココと、大好きな歌を歌える。こんなに素敵なことは無い。

「何歌う?今の歌でいい?何歌いたい?」

「イテッ!かなたん、早口、早口」

「だぁって~!嬉しいんだもん!!ココ大好き!!」

嬉しいと、ついつい早口になっちゃうよね。

「だ、大好きって、お前、誰にでも言ってるだろ」

「ココは特別だよ~!!」

もちろん、すいちゃんもトワも大好きだし、一緒に歌うのは楽しい。でも、歌が苦手と言っていたココが、僕と一緒に歌うというのが重要なんだ。

「そっ、それに、練習してないから今回は無理だぞ!次な、次!」

次なんて待ってられないよ!歌が難しければ、コールか口上か……

「……そうだなあ、じゃあこれ!」

「聞いたこと無いが」

少し昔の、作画が良いアニメの主題歌を指定する。歌枠でも歌ったこと無い歌。

「これはねえ、サビで拍手するんだよ。いったんスマホで音楽を鳴らすから、拍手のタイミング練習しよう!」

「おっ、おう」

「騒然!鳴り」パァン!



 起きた。

自分のベッドだ。

何だったんだろう。


夢は自分の願望を映すと聞いたことがある。僕は、夢の中でココとカラオケに行っていたから……僕はココと一緒に歌いたいんだ。

ココには何度か頼んで、そのたび断られて、ずっと諦めていたけど、願いが消えたわけじゃない。


ふと思い出して、飛び起きる。PCの中の、あるファルダを呼び出した。

「ソーラン節2」

全部僕の声で収録したソーラン節の、動画にした方のデータが入っている。

僕の声で録った前奏を流し、同時に他の音声データも再生する。


「ドッコイショォ!ドッコイショォ!」「ソーラン!ソーラン!」

そうだよ。ココはデビュー直後から、一緒に歌ってくれていたじゃないか。

主旋律は僕。

「ヤァァ~~レンソーランソーランソーランソーランソーラン」

「ハイ!ハイ!」

合いの手はココ。


ひととおり歌ったら、次は2nd fes.の映像を見よう。




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 pixivで投稿した2本目の二次創作小説です。シリーズを始めてしまったので、ココ視点の次はかなた視点を書きました。


 投稿の時期は、僕が3月10日に前作を投稿した直後、3月14日のホロAmong Usで偏執的ともいえるココのかなたんへの愛を見せつけられたので、触発されて書いたという感じです。

しかし、あまりに完成されたかなココに、妄想をうまく駆動できず、シリーズものとしては続けて書くのを一時中断となりました。

2022年9月11日日曜日

新英国国歌について

 令和4年9月8日、英国の国家元首、エリザベス2世女王が亡くなった。そして即日、チャールズ3世が即位した。

「亡くなる」という表現は、正しいものかどうかわからない。「薨去」とか、「崩御」とかいうべきかもしれない。

 ただ、国歌クラスタにとっては、それよりも大事なことがある。


 英国国歌のタイトルと歌詞が変わる。


 英国国歌「God save the King」のタイトルは、その制定から数度、王の性別により「Queen」と「King」とを行ったり来たりしている。

制定から92年間は、男性王の治世だったから「King」、次にヴィクトリア女王の御代で64年間「Queen」、51年間「King」、そしてエリザベス2世の70年間「Queen」となる。女王の治世が長い!1人の治世期間が男性王の4代分の期間とだいたい同じくらいある。

 更に、「God save the King」の歌詞の中には、「King」以外にも「he」「him」という人称代名詞があり、文法的な正しさのためにこれも変動する。


 以上の二点については、70年前の代替わりの時にも変化した所だが、どうも今回の歌詞変更はそれ以外にも変更された箇所があるようだ。

3番の歌詞に「To sing with heart and voice」とあるが、今回の歌詞変更で「With heart and voice to sing」と変わったようだ。次の節の最後の単語が「King」のため、韻を踏むために「sing」を最後に持ってきたということらしい。

 しかし、「voice」は「Queen」と韻を踏んでいないので、逆に「sing」を「voice」に読み替える必要が無い。不思議に思って調べたら、エリザベス2世の前代ジョージ6世の映像内でも「To sing with heart and voice」と歌っている。

George VI: "God Save the King" (UK National Anthem, Westminster Abbey Choir, 1937 Coronation)

Anthem of the British Empire "God Save the King" (1901-1952)

 思うに、この語順変更はチャールズ3世の時が初めてで、これまでに無かった歌詞変更であろう。


 最後に、エリザベス2世のご冥福をお祈り申し上げます。

2022年9月3日土曜日

二次創作小説「かなたと、星をつかみに。」

かなたと、星をつかみに。

ココとかなた、夢うつつ。

 この作品は、2021年3月10日 18:30に投稿された作品です。


夢の中の話です。


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ココは気づいた。 これは夢だ。 だってここは__ではない。ホロライブハウスも無い。  あたりを見回すと、足元--自分は寝転がっているから、体の下でもある--は土で、十数フィート先は崖になっている。崖には一か所、粗末な吊り橋がかかっており、向こう側と行き来できるようになっている。そこには小さな集落があり、奥は里山になっているようだ。里山に向かって道が伸びているので、その先には大きな村があるのかもしれない。 集落の家々は木造でレンガ造りは無い。吊り橋の縄は、麻か何かでできているようだが、どのくらいの重さが耐えられるのか怪しいものだ。 動こうとしたが、どうも体が重い。腕を動かそうとしたら、土埃が立った。手元にはうろこ。そうだ。私はドラゴンだった。人の気配に誘われて居ついたドラゴン。  集落から人が出てきて、吊り橋をおっかなびっくり渡ってくる。これは貢物を持ってくる儀式。老人と荷物持ちの少女と青年の3人。男性2人は動物の皮をひもで繋げた服(服といっていいのかどうかはわからないが……)を着ているが、少女は首と腰にひもを巻き付けて布を垂らしただけで半裸と言ってさしつかえない状態であった。 青年が最初につり橋を渡り、次に少女。最後に老人が来るようだ。なんだろう、橋を渡っている少女にどこか見覚えがある。小さい背格好に、うつむきがちな顔、ぼさぼさで伸びっぱなしだが美しい銀色の髪、青いひと房。まさか、まさか!お前、かなたんじゃねえか! 思わず、少し身を乗り出す。「ぐおっ」と鳴き声が漏れる。Shit, 人語は発せないか。その音に、青年と対岸の老人は驚いたようだったが、橋を渡っている少女--かなた--は全く気付かないようだった。 かなた、耳、聞こえているか? 絶望感にさいなまれて、うずくまってしまった。夢の中とはいえ、そんなことってあるか。  人間がこっちに近づくときは、驚かせないのがここのルール。老人がこちらに渡り終えるまで、静かにしておくことにした。 3人がそろった。中央の老人が祝詞のようなものを唱え、それが終わるとかなたは風呂敷を広げて貢物をこちらに差し出した。私は大きな爪で貢物を引き寄せる。かなたは、少しおびえているようだ。上目遣いで身を縮こまらせている。 私がわかるか、かなたん。 声は届かない。姿かたちも違う。わかるわけ、ないか。  ゆっくりと、爪の表側をかなたに近づける。かなたは、そっと、その端に触れた。今度は、かなたを爪の内側に隠すようにして、指の腹でそっとかなたの頭をなでた。 かなたはけげんな表情だったが、逃げ出したりはしなかった。十分だ。これで。私たちは隣にいても、傷つけないし、攻撃しあわない。互いに干渉しない。そうしてきたじゃないか。  ドラゴンがそんな行動に出たのは初めてだったらしく、老人は腰を抜かし、青年は斧を構えていたが、かなたと触れ合ったあと私が再び元の体勢に戻ると、安心したようだった。かなたを引っ張り、行きと同じ順で橋を渡っていった。  言葉も食べ物も何もかも違う世界、かなたはどんな生活を送っているだろうと疑問を覚えた。ましてや耳が聞こえていない中で、どのように暮らしているのか。 さすが夢の中というか。かなたの姿を見たいと思ったら橋の向こうの集落の、さらに家の中なのに、かなたの姿がありありと見て取ることができた。植物を乾燥させて、繊維をとる仕事をしている。木材で繊維をほぐして、糸をつむぐ仕事も。しかし、糸を引き出すのに、力が強すぎて途中でちぎれてしまった。隣で作業する女性に、思い切りはたかれる。言葉で説明される機会が無いから、コツがわからないまま見よう見まねでやってるのだろう。 飯を作れば、煮物を上げるタイミングが悪く芋が生煮えだったり、湯が沸かなかったり、すいとんがグズグズだったり。子がいるようだが、泣いていてもそれに気づけず、後ろからはたかれてようやくそれを知ることができたり。かなたは器用とは言えない生活を送っていた。 仕事も満足にできず、娯楽もない。子守をするかなたに、夫?が暴力をふるうのが日常のようだった。かばう者も助ける者もいない。かなたは「あぁ」とか「おぉ」とか言いながら、土下座して許しを乞うていた。……いや、あれは生命を守るために体を伏せ、暴力が終わるのを待っているという方が正しいか。 夫や、村人の暴力は、昼夜問わず続けられた。耳が聞こえないために不便を被り、何を言ってもわからないから口汚い罵声を浴びせる。かなたはそれらを毎日耐えているのだった。  ある晩、かなたは家出をした。子守に疲れ果て、夜中にひとしきり殴られたかなたは、橋を渡ってこちらに歩いてきた。私は夜行性のドラゴンのため、かなたがこちらに歩いてくるのはすぐにわかった。 かなたの足取りはおぼつかない。しかし、集落での生活に疲れ果て、とにかくどこでもいいから、集落から離れた所に行こうと必死になっていた。その先は、唯一自分を殴らない、巨大なドラゴンだった。 私は腕を伸ばし、橋のこちら側のたもとまで指を差し出した。暗闇の中、橋を渡り切ったかなたは、私の硬い爪に触れると、それに縋りつくようにしてもたれかかり、そのまま指をソファのようにして丸まって寝入ってしまった。私はかなたを起こさないように、注意深く指でかなたをすくい上げ、私の体の方へ抱き寄せた。  翌朝、集落からかなたがいなくなってことで村人がざわついた。かなたを探す声は谷中に響いたが、当然ながらかなたがそれに気づくことは無かった。 日が高く上るころ、村人が橋を渡ってこちらの様子をのぞきに来た。かなたの家出先がバレたのだ。しかし、私がかなたを抱き寄せて離さず、邪悪な口を開けて睨むと、ひっくり返って集落に帰っていった。 私はもはや、かなたを集落に返すつもりは無かった。指の間で平和に眠るかなたを、安心するまで寝かせておきたかったし、村人たちの暴力のことなんてひと時も思い出させたくなかった。  かなたは夕方になって空腹で起きたようだった。誰かに怒られるかと思ったらしく、ひとしきりじたばたしていた。指の中でもぞもぞ動いてくすぐったい。しかし、かなたを殴る者が周りにいないとわかると、少し落ち着いたようだった。 そうさ、かなたん。お前が家出したんじゃなく、私がお前をさらったんだ。だからお前は悪くない。誰もお前を責めないよ。 数日前にかなた自身が持ってきた貢物を爪で引き寄せて指さした。かなたはその意図を理解したようで、少しずつ食い始めた。 私はそれが無性にうれしくて、なんだか踊り出したくなったんだ。かなたが腹いっぱい食い終わり、またすやすやと寝入ったとき、私はもう、がまんできなかった。日が落ち、星が光り出す夜に、私は前足でかなたを抱き上げ、大空へ飛び上がった。かなたは少し驚いたようだったが、自分に加わる力が暴力ではなく上昇の加速度だと気づき、自身の頭を守っていた腕で私の指をぎゅっと握った。固い握手。イテェ。 「きゃーっっ!!きゃっ!きゃっ!!」 かなたが心底楽しそうに声を上げる。風を切り、雲を抜け、星をつかむほど高く。  起きた。 自分のベッドだ。 都合よく、かなたは共有リビングにいた。無言で近づいて対面し、両腕でかなたの肩をつかむ。 「ちょ、ココ?何?」 びっくりした表情のかなたに、かける言葉が見つからない。『無事か?』?違う。『殴られてないか?』?いや、違うって。『耳聞こえてるか?』?何言ってるんだ。 「……何かあった?」 かなたんの真剣な顔。いけない、かなたんを無駄に心配させてしまう。それはいけない。 「……怖い夢見た。一緒に寝て」 「なあんだココぉ!!甘えちゃって!!」 かなたが破顔する。ちょっと恥ずかしいが、ほとんど本当だし、問題ないだろう。 「よしよし、怖かったんだね」 そうだ。こうして、包んで。包まれて。  二人で星をつかみに行こう。


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 pixivで初めて投稿した二次創作小説です。これの前に、「ゆるゆり」の小説があったような気もしますが、まともに完結していないどころかプロットすら成立してないのでノーカンです。

 投稿の時期的には、桐生ココが断続的に休止していた2020年9月~12月を経て、2月11日の収益化1周年、2月17日桐生ココ100万人達成、2月20日かなたんからSwitchとお手紙のプレゼントがあった後です。

 Twitter上で、「 #twinovel 」「 #ホロ140字小説 」をいくつか書いていたのですが、15年ぶりに長い小説を書きたいと思い至りました。かなココは僕に、創作の楽しさを思い出させてくれました。