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2023年3月18日土曜日

二次創作小説「確かに、お返ししました。」

 確かに、お返ししました。

この作品は、2022年3月14日 23:00に投稿された作品です。

~天音かなたと桐生ココのコラボ放送です。
桐生ココ卒業?何のことですか??
現実には、まだまだ油断できない状況ですが、例によって無視しています。

皆さまは、良いホワイトデー、迎えられましたか?~

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 「ううう~~~ん………」
金曜の夜、天音かなたは悩んでいた。
PCの傍らには、きらきらしたラメに彩られた菓子の包み紙が丁寧に折りたたまれている。
2月14日に、桐生ココからもらったバレンタインデーのチョコレート菓子。
とても、おいしゅうございました。

 あれから1か月が経ち、本日は3月11日。
ほんの1週間後にライブを控え、ボイトレにダンスレッスン、提出物、サイン書き、配信と企画の準備に追われ、何んにも用意していない。
「ホワイトデーのお返し、どうしよう」
 引っ越しのドタバタで、バレンタインデーのお礼は結局、discordで話すだけになっちゃったし、焼肉も行ってない。
コンビニのホワイトデーコラボのクリアファイルは、運営さんに頼み込んで2枚もらった。今頃ココの部屋にも同じものがある。ココは結構、そういうの喜んで使ってくれるから、書類とかが入ってるかもしれないな。
まあ、それを「ホワイトデーのプレゼント」って言うのは、さすがに無理があるよね。渡したの、3月入るかどうかくらいだったし。

 百貨店に買いに行くしか無いか……でも、外に出る服が無い。服を買いに行くにも、服を買いに行く服が無い。いい加減通販もしたくないし……。


 ところで、USドラゴンアメリカでは、ホワイトデーに何を上げるんだろう?チョコじゃなくて、マシュマロとかクッキーとかをあげるって、聞いたことがある気がしてきた。
これはヒントになるはず!!

 検索、検索、……『USDAには、ホワイトデーは存在しない』。

 考えることが増えた。
ココはホワイトデーを知らないかも。それなのに、急にプレゼントを贈ってしまったら、誤解されちゃうよ!?
 べ、別に、僕がココにプレゼントしたいんじゃなくて!
ホワイトデーのお返しだから!
「しかたなく」だから!!


 はあ、はあ、………はあ。
疲れた。ホロライブでも見よう。
今夜はホロライブの公式放送があったはずだよね。フブミオ対決。フブミオはとっても仲が良くて、「てぇてぇ」カップリングで目の保養にもピッタリ。きっと今夜も素敵な放送になること間違いなし。



 その晩、天音かなたの目に、飛び込んできた光景は、彼女の正気を飛ばすのに十分な量の「てぇてぇ」であった。彼女はディスプレイの前でたっぷり1時間「無理……無理……」とうめくだけの生物となった。

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 来る、3月14日の夜。
ココに提案し、2日でまとめた企画。配信がうまくいったらいいな。
「みんな、おはよう!おはようではないんですけど。週末に公式放送で致死量のてぇてぇを浴びてしまい、とても良い眠りにつきました。天音かなたです。」
---フブミオてぇてぇ!
---かなココも負けず劣らずてぇてぇのだが?
「はい、みんなお静かに!本日は桐生ココさんをゲストにお呼びして、格付けチェックをですね!したいと思います!!」
「おゎおゎおゎ~!!へい民の皆さん、こんドラゴーン!!桐生ココで~す」
直接お返しするのは、無理無理無理。
だけど企画でなら、おいしいものを食べさせても、バレないよね。
「では早速ですね、ココには目隠しをしてもらいます~。今回格付けチェックを行うのは、それぞれが準備したネタとなっております!僕のネタは……チョコレート!」
---ホワイトデーのチョコだ!
---ホワイトデー尊い
---会長!コメント見てええええええええ
「はい、ここにですね、AからGまでの7つのチョコが用意されておりましてですね、それぞれミルクチョコ、ホワイトチョコ、チョコカカオ50%、焦がしミルクチョコ、高級ミルクチョコ、高級ミルクチョコカカオ72%、高級チョコカカオ50%、……となっております」
「さすがにそれわぁ……間違わねぇだろう」
ココの3Dが腕を組む。
「本当にぃ~?高級チョコとか、わからないんじゃないの?ココぉ」
「てめぇ言ったな?全部当ててやるから吠え面かくなよ?!」

「はい、ココ。あーんして」
「あーん」

Happy White Day!!


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バレンタインデー企画に続いて、ホワイトデー企画の作品です。チョコレートを食べさせあうシチュエーションは、フブミオが公式放送で行った「利きチョコ」を丸パクリしたものです。
【#つながるホロライブ】イベント直前!フブミオ対決!!【#フブミオ対決】
現実では、かなたんの休止が続いており、直近に3rd LIVEが迫っていました。「#かなたん大好き」タグによるtweetが毎日TLに投稿され、僕はそれをまとめておりました。当日のトゥゲッターはこちら。
天音かなたのお見舞い(3月14日)にかけつけ、 #かなたん大好き とエールを送るへい民たち
毎日、みんなでかなたんに届くようにtweetをするのはある意味楽しかったです。

2023年3月14日火曜日

二次創作小説「確かに、お届けしました。」

 確かに、お届けしました。


この作品は、2022年2月14日に投稿された作品です。



~天音かなたと桐生ココのお引越しの一幕です。

現実には、とんでもないタイミングで、とんでもないことになっておりますが、あえて無視しています。


皆さまは、良いバレンタインデー、迎えられましたか?~



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2月12日。
忙しい。忙しい。
配信アーカイブの確認して。
スケジュールの確認して。マネちゃんに送信。
サインは……3日後の僕がやってくれる!後回し!!
箱詰めした段ボールの発送準備して。
あっ、これはまだ発送しちゃダメなやつだった!
ノートPCは一つ残しておきたい。配信したくなったときに困るからね。
マ~ジでやることが多すぎて過去イチ忙しい。
------iPhoneの振動。
Discordの通知だ。誰からだろう。
あっ、ココだっ。
『今忙しいか?』
え……?そりゃ忙しいんですけど……
いやいや、ここは文字通りに受け取ってはいけない。僕は察することができる天使。
ココは、僕が今引越し準備中で、サインも毎日深夜まで書いてることを知ってる。
隣の部屋にいるんだから、「忙しい」ことを知らないはずがない!
と、いうことは!
ココは今すごく重要な話があるはず!!
『ううん、全然!何?』
『部屋行ってもいいか?』
『いいよ』
------扉の開く音。
ラフな格好をして、ココが来た。
「いらっしゃい、ココ」
ココ、なんだかもじもじしてる。手ぶらで僕の部屋に来るときは、いつも、ズンズン入ってくるのに。
「あの……サ」
ココは床を見ながら、両手を体の前でいじったり、しっぽを触ったり、角を触ったり、足踏みをしたりしてる。
「ココ?」
「……!!」
ココの両腕が跳ね上がるみたいに上がって、ココはボクシングのファイティングポーズみたく縮こまった。
「くふふっ!名前呼んだだけでビビりすぎ!」
そんなの、つい笑っちゃうじゃん!
「くふふふっ、ふふふ、それで、ココ、用は何?」
ココはさっきの驚いた姿勢からさらに縮こまって……
「なっ!なんでもねぇ!」
------急いでドアを開け、後ろ手に閉めようとしたドアに尻尾が挟まる音。再度、閉めなおす音。
変なココ。
もじもじしてたけど、目が泳いでたし、たぶん、それほど真剣な話じゃないよね。引っ越し落ち着いたら、また聞く!
------インターホンの音。
あっ、荷物を取りに来た業者さんかな?
早く出なきゃ。
はいはいはーい。
ん?テーブルに小さな紙袋……僕のじゃないし、ココのかな?


「配達よろしくお願いします」
「承りました!」
業者さんに荷物も渡せたし、部屋に戻ろう。
テーブルの紙袋、無くなってる。







2月14日
新居に到着~!
新居で最初にすることは決めてるんだ!当然、配信!!だよね!
『新居に引っ越したよ~!今日は19時から!!』
ツイートもOK!
19時……そういえば、ココ、今日の配信の予定、詳しく聞きたがってたなあ。なんでだろう。
------インターホンの音。
はいはーい。また引っ越しの荷物ね。
あれ?引っ越しの荷物は、さっき届いたので全部のはず。これは何だろう?送り主……僕の名前になってる!?
------包みを開ける音。
えっ?
うっわあああああ!!可愛いチョコレートのお菓子!!
手紙もついてる。
読むしかないよね。

『Happy Valentine's Day!!
直接渡したかったけど、忙しそうだったから宅配便にしたったわ!
先に新居、あっためといてくれよな!』

......!
忘れてた。
忘れてた忘れてた!!
色々、色々全部、見落としてた!!
あんなにココは、僕のこと気にしてくれてたのに、僕は忙しい忙しいって!

------discordのコール音。

「ココ!」
「お~!」
「ごめん!僕、ココのこと放っておいて!」
「なんだよぉ、急に」
「だって!チョコ!!」
「届いたかぁ……日和って渡せなくて、ごめんな。ハハ」
そんな、ココ、僕の方が、悪いのに。
「ココ……!」
いや、でも、僕がココに届ける言葉は、謝罪じゃなくて。
「ココ!!ありがとう!!」

Happy Valentine's Day!!


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クリエーターは、締め切りが無くても作品を書ける者と、締め切りが無ければ作品を書けない者がいます。僕は後者です。

バレンタインデー企画時には、同居中のかなココが一緒に同所に引っ越すということが語られていました。しかしその当日、かなたんはコロナ感染を発表。奇しくも借り始めた新居にセルフ隔離生活となってしまいました。

テーブルに置かれた紙袋。伝えきれない愛が、恥じらいという名の包装紙に包まれているのです。

2023年3月12日日曜日

二次創作小説「クリスマスイブの誘拐」

クリスマスイブの誘拐


 この作品は、2021年12月25日 15:44に投稿された作品です。


~いつもは、かなたんはこんなことは絶対にしません。

しかし、誘拐されて、したことだから、しかたないのです。

だから、「誘拐」なのです。~


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 「お先に失礼します」
口々に、社員は職場を後にする。僕もその一人だ。
階段を降り、地下鉄駅までの短い時間は、少しだけ音の出るアプリを起動することができる。
You Tubeアプリを開き、仕事中に通知されたホロメンのチャンネルを巡回する。耐久歌枠、ゲーム配信、スパチャお礼枠。どれも見たい配信だが、スマホのアプリで見ている以上、どれかを選ぶと他の配信を見ることができなくなる。選択って、残酷で、骨の折れる行動だ。
 今年の24日は金曜日で、つまりは仕事をし終えてからホロライブの配信を見るといういつも通りの日を送ることが元々決まっていた。
家に帰っても、特段することは無い。仕事はまだ納まっておらず、土日を挟んでまだ3日間働く必要がある。年末に休みがあるだけ、いくぶんマシだ。今年も「ゆくホロくるホロ」を見て、正月衣装のホロメンを見て、週明け1月3日から社畜の一年が始まる。

 地下鉄駅に入り、階段を降り終わる。定期を改札にTap、2番ホームの定位置に並んだ。
一旦You Tubeアプリを閉じて、Twitterを開く。こちらの通知も、ホロメンのアカウントがツイートすると全部通知される設定になっているので、配信告知やおはようツイート(今、18時だけど……?)であふれていた。
仕事に情熱を燃やす性格ではないし、これといって友人も多くないので、ホロメンのツイートは、ほとんど唯一の関心事だ。
その中で、ある天使のツイートに目が行った。
 「今夜、赤ウパ耐久しようと思ってたけど、時間変更になるかも!ごめんね!」
 かなたんの配信は見たいけど、他にも目を引く配信がたくさんあるので、リアタイの予定はなかった。もしも重要な暴露があったら、切り抜き師さんたちが切り抜いてくれるだろう。
しかし、杞憂民杞憂民のかなたんが、何の説明もなく時間変更……。きっと配信前に何らかのツイートはあるだろうし、それを待つしかないけど、ちょっと気になるな。

 そんな時、新しい通知がポップアップした。かなたんのRT。ツイート主は、全く知らないアイコンで、アカウント名は「dragon_from_USDA」。
 「今夜、天使をさらってやるぜ!!」


               ~クリスマスイブの誘拐~


 一瞬のうちに、何が起こったかを察した。dragon_from_USDAの正体も、天使をさらうという意味も。
TwitterのTLは、一気に沸き上がった。
『配信が無し、了解!』
『熱いねえ!!』
『お幸せに!』
『ついに、かなたんも結婚か……』
僕も、「いいね」を押して、地下鉄の中ではTwitterをチェックして過ごした。

 地下鉄を降り、家路につくと、誰もいない真っ暗な住宅街を歩くことになる。その時間は、少々音が出ても平気なので、潤羽るしあの配信をつけてラジオ代わりに流すことにした。
 「いいじゃん!うまくできたんじゃない?まだまだ作れるよ!」
るーちゃんのお菓子作り配信は佳境だ。パンケーキが一つできあがり、次のもう一枚を焼き始めた。
「んっ?来たかな?……みんな、ちょっと待ってね!待っててくれる?!」
るーちゃんは何も載っていないホットプレートを映したまま、とたたたっとどこかへ走っていった。
たっぷり5分後、再び声が乗った。
「みんなお待たせ~!かなたんたちが来てくれたよ!クリスマスプレゼントだって!!」
コメント欄がざわつく。当然、みんなTLでのかなたんのRTは見ている。
「写真撮ってきたから……これ!ロウソク!!可愛い~~」
るーちゃんの配信に、写真が載せられた。小さなカップのロウソクの上に、天使とドラゴン、そして蝶の絵が置いてある。
るーちゃんは、遠くに呼び掛けるように、マイクから口を離して、「ありがとう!!」と叫んだ。
「かなたんと……お友達が、“キャンドルサービス”って言ってたー。キャンドルサービスって何?」
それで、僕らはみんな、何が起こったのか再び察した。
『結婚式!!』
『かなココ結婚だ』
『るーちゃんキャンドルサービス知らないの?』
『YEAHHHHHHHH』
と爆速で流れていた。
 かなたんが去った後のるーちゃんのコメント欄も、『かなココ結婚』で埋め尽くされていた。
「みんな急にごめんね~。さっき連絡が来て、『遊びに行っていい?』ってきて、『いいよ』って言ってたんだけど、まさかこんなすごいプレゼントくれるとは思わなかったから」
るーちゃんはパンケーキ生地をホットプレートに広げながら、つぶやく。
「るしあ、今ロウソクの火見てる……いいよね、こういうの」


 僕は家にたどり着いて、るーちゃんの配信を見ながらTwitterを更新した。するとdragon_from_USDAのツイートを、かなたんがまたRTしていた。
「死霊術師の家にお邪魔した次は、騎士団長の家だぜ!!」
 TLのみんなも、ノエル団長の配信に移動するみたいだ。
「団長、今日はこれくらいにして……1時間ポッキリですのでね」
団長の配信は、ちょうどマリオカート配信が終わり、スパチャ読みが始まる時間だった。
「あっ、みなさん、少々お待ちくださいね~」
サンタ衣装の団長が動きを止め、また5分後、戻ってきた。
「ただいま~!かなたんたちが来てくれたんだけど、声乗せたくないって言ってすぐ帰っちゃった。気にしなくていいのにねえ」
そう言って団長が配信に載せたロウソクには、天使とドラゴン、メイスの絵が置かれていた。
「聖夜のキャンドルサービスだって!あこがれちゃうなあ。団長も、フレアと……」

 dragon_from_USDAのツイートとかなたんのRTは、その後も続いた。
 「宝鐘マリン@ホロライブ3期生
配信の合間に、天音かなたとその連れがクリスマスプレゼントをくれました
キャンドルサービスって言ってました
てぇてぇですね」
絵文字を除くと意外に落ち着いた印象のマリン船長のツイートには、やはり火のついたキャンドルの写真があった。天使とドラゴン、そしてドクロ君の絵が添えられていた。
 「白上フブキ@敗北はイカが?
天使とドラゴンがキャンドルサービスしに来たぞ!
クリスマスだからってノロけやがってえー
尊い!」
写真には、天使とドラゴンとトウモロコシの絵が添えられている。
 TLは、
『テーブルを回ってるんだ!』
『尊い……これが天界か……』
『は?尊すぎ死ぬ』
『かなココは永遠だよな!!!』
と、歓迎のツイートがあふれ、「かなココ結婚」がTwitterトレンド1位になった。


 ひとしきりTLの盛り上がりが終わると、かなたんからのツイート通知が来た。
「みんなただいま!!!
色違い赤ウパー耐久!!!やるぞおおおおおお!!!!!」
作りこまれたサムネイルで、ポケモン耐久枠が建てられていた。
しかし、かなたんのツイートの履歴を見ると、「dragon_from_USDA」のツイートをRTした履歴は一つも残っていなかった。
「dragon_from_USDA」のアカウントに飛んでみても、「このアカウントは存在しません」と表示された。
 誰もが、おとなしくかなたんの配信を待つしかないのか……と思った。
しかし、配信の数分前、かなたんのTwitterからまたもやツイート通知が届いた。
 「天音かなた ホロライブ4期生
今日は色んなホロメンのところにお邪魔して、すみませんでした。
近くに住む友人が、これをホロメン全員分作ってくれました。
クリスマス中に全員に届けることはできないけど、届けられる分だけ、さっきまでに届けました。
メリークリスマス。」
そう言って、今日のツイートが無かった全員分の、膨大なロウソクの写真がアップロードされていた。
ロウソクの上には、天使とドラゴンに加えて各ホロメンのモチーフが添えられている。

 ただし、一番手前のロウソクには、天使とドラゴンしか載っていない。
その代わり、ロウソクの前に、かなたんの天使の輪と、代紋ピンバッヂ、そして一対のペアリングが置いてあった。

 さあ、23時からかなたんの配信だ。
どんなコメントと、スーパーチャットを投げようか。


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pixivに小説を投稿し始めて、他の人が「企画」というイベント合わせのようなものをしているのを初めて知りました。

グルッグズ・マッドヴラドが主催した「ホロSSクリスマス甘ネタテロ」が目に入り、僕ならやはりかなココと思ったので書きました。この時期はかなココはまだ同居もしていましたから、それを踏襲した内容になっています。

この時期以降、グルッグズの企画やホロクリエイター企画に参加していくことになります。

2022年9月19日月曜日

二次創作小説「ココ、僕と歌おう。」

ココ、僕と歌おう。

ココとかなた、夢うつつ。

 この作品は、2021年3月18日 23:50に投稿された作品です。



~実在のアニメソングを題材にしています。念のため、歌詞をほとんど削っています。。~


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 かなたは気付いた。

これは夢だ。

だって、僕とココが一緒にカラオケに来ることは無い。僕やすいちゃんがいくら誘っても、ココが来たことはない。



 僕とココは8人部屋の普通のカラオケボックスにいる。僕がよく使う店のものだ。部屋の四辺のうち二辺にソファが並んでいて、ソファの無い所に壁と、カラオケの機械が置いてある。部屋の中央に机があり、予約機械や料理のメニュー表が置いてある。ココは僕の左側に座って、何か歌ってる。夢だからか、歌声はよく聞こえない。

僕はいつもどおり壁のコンセントに携帯の充電プラグを差し込んで充電した。

「おめぇ、次何歌う?」

ココの声。いつの間にか、ココは歌い終わっていたみたい。

まあ、いいや。せっかくカラオケに来たし、歌おう。

「き、み、を、の、……予約」

超超有名アニメ映画のエンディングに流れる歌。日本人なら大半が知っている歌で、ココも知っているはずだ。



 「~~」

僕が歌っている間、ココは無表情でカラオケの機械のモニターを眺めている。日本語の歌詞が表示されて、歌い終わった部分は色が変わっていく。英語のテロップとかを流す方法、無いのかな?


「ル~ル~~ル~」

メロディが切り替わったときに、つい主旋律側ではなくコーラス側の音程を歌ってしまう。当たり前だけど、ルルルだなんて、カラオケの機械には表示されてない。主旋律には歌詞があるもんね。

ココが首をかしげながら、こっちを見てきた。「歌詞違わない?」と思ってるかもしれない。

同じような経験は、何回かしている。たいていは、けげんな表情をされたまま終わる。まれに、ごくまれに、主旋律をかぶせてくれる人もいる。


でも、僕はココにはそれを期待しない。お互いに、あまり多くを期待しないのが僕らだから。今までもそうだったし、これからもそうだ。

だから、僕はココの方をちらっと見ただけで、その歌詞が本来のものであるかのように堂々と歌う。

「つめこ~んで~」

サビに入っても、メロディではなく低い音程のパートを歌う。学校の合唱では、「アルト」パートというけど、イタリア語で「アルト」は「高い」って意味らしい。なんか不思議。逆だよね。


ココは、聞いたことのない音程はあきらめて、僕の声を聞くことにしたようだ。歌い甲斐があるっていうのかな。一心に僕の歌を聞いてくれる人がいると、がんばって歌おうという気持ちになる。それがココならなおさらだ。僕の歌をほめてくれて、好きだって言ってくれて。へい民のみんなには悪いけど、僕の一番大事なファンだ。



 歌い終わる。

ココの拍手。少しくすぐったいけど、さすがに慣れた。

「オメー、これ普通の歌?じゃないよな?」

「そうだね、合唱用の音程。普通の主旋律、メインメロディを歌ってる人の裏で、僕はこっちを歌うの」

「ふうん」

ココが合唱をやるとしたら、ソプラノかな、アルトかな。ソプラノも行けると思うけど、声が少し低いから、アルトの方が似合うかな。歌に苦手意識があるみたいだから、練習は必要になるね。まずは苦手意識を取らなくちゃ。


「かなたん」

「何?ココ」

ココはあさっての方を見ながら、僕の名を呼んだ。ココが恥ずかしがる時の仕草だ。かわいい。

「その、合唱っていうの?私たちも………できるんか?」

「~~~~!」

言った。小声だけど、カラオケボックスのCMの音に負けないように、確かに言った。僕の頬が熱くなる。

「できるよ!できる!!ココ!嬉しい!!」

僕はたまらずココの右腕をつかんでぶんぶんと振り回した。大好きなココと、大好きな歌を歌える。こんなに素敵なことは無い。

「何歌う?今の歌でいい?何歌いたい?」

「イテッ!かなたん、早口、早口」

「だぁって~!嬉しいんだもん!!ココ大好き!!」

嬉しいと、ついつい早口になっちゃうよね。

「だ、大好きって、お前、誰にでも言ってるだろ」

「ココは特別だよ~!!」

もちろん、すいちゃんもトワも大好きだし、一緒に歌うのは楽しい。でも、歌が苦手と言っていたココが、僕と一緒に歌うというのが重要なんだ。

「そっ、それに、練習してないから今回は無理だぞ!次な、次!」

次なんて待ってられないよ!歌が難しければ、コールか口上か……

「……そうだなあ、じゃあこれ!」

「聞いたこと無いが」

少し昔の、作画が良いアニメの主題歌を指定する。歌枠でも歌ったこと無い歌。

「これはねえ、サビで拍手するんだよ。いったんスマホで音楽を鳴らすから、拍手のタイミング練習しよう!」

「おっ、おう」

「騒然!鳴り」パァン!



 起きた。

自分のベッドだ。

何だったんだろう。


夢は自分の願望を映すと聞いたことがある。僕は、夢の中でココとカラオケに行っていたから……僕はココと一緒に歌いたいんだ。

ココには何度か頼んで、そのたび断られて、ずっと諦めていたけど、願いが消えたわけじゃない。


ふと思い出して、飛び起きる。PCの中の、あるファルダを呼び出した。

「ソーラン節2」

全部僕の声で収録したソーラン節の、動画にした方のデータが入っている。

僕の声で録った前奏を流し、同時に他の音声データも再生する。


「ドッコイショォ!ドッコイショォ!」「ソーラン!ソーラン!」

そうだよ。ココはデビュー直後から、一緒に歌ってくれていたじゃないか。

主旋律は僕。

「ヤァァ~~レンソーランソーランソーランソーランソーラン」

「ハイ!ハイ!」

合いの手はココ。


ひととおり歌ったら、次は2nd fes.の映像を見よう。




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 pixivで投稿した2本目の二次創作小説です。シリーズを始めてしまったので、ココ視点の次はかなた視点を書きました。


 投稿の時期は、僕が3月10日に前作を投稿した直後、3月14日のホロAmong Usで偏執的ともいえるココのかなたんへの愛を見せつけられたので、触発されて書いたという感じです。

しかし、あまりに完成されたかなココに、妄想をうまく駆動できず、シリーズものとしては続けて書くのを一時中断となりました。

2022年9月3日土曜日

二次創作小説「かなたと、星をつかみに。」

かなたと、星をつかみに。

ココとかなた、夢うつつ。

 この作品は、2021年3月10日 18:30に投稿された作品です。


夢の中の話です。


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ココは気づいた。 これは夢だ。 だってここは__ではない。ホロライブハウスも無い。  あたりを見回すと、足元--自分は寝転がっているから、体の下でもある--は土で、十数フィート先は崖になっている。崖には一か所、粗末な吊り橋がかかっており、向こう側と行き来できるようになっている。そこには小さな集落があり、奥は里山になっているようだ。里山に向かって道が伸びているので、その先には大きな村があるのかもしれない。 集落の家々は木造でレンガ造りは無い。吊り橋の縄は、麻か何かでできているようだが、どのくらいの重さが耐えられるのか怪しいものだ。 動こうとしたが、どうも体が重い。腕を動かそうとしたら、土埃が立った。手元にはうろこ。そうだ。私はドラゴンだった。人の気配に誘われて居ついたドラゴン。  集落から人が出てきて、吊り橋をおっかなびっくり渡ってくる。これは貢物を持ってくる儀式。老人と荷物持ちの少女と青年の3人。男性2人は動物の皮をひもで繋げた服(服といっていいのかどうかはわからないが……)を着ているが、少女は首と腰にひもを巻き付けて布を垂らしただけで半裸と言ってさしつかえない状態であった。 青年が最初につり橋を渡り、次に少女。最後に老人が来るようだ。なんだろう、橋を渡っている少女にどこか見覚えがある。小さい背格好に、うつむきがちな顔、ぼさぼさで伸びっぱなしだが美しい銀色の髪、青いひと房。まさか、まさか!お前、かなたんじゃねえか! 思わず、少し身を乗り出す。「ぐおっ」と鳴き声が漏れる。Shit, 人語は発せないか。その音に、青年と対岸の老人は驚いたようだったが、橋を渡っている少女--かなた--は全く気付かないようだった。 かなた、耳、聞こえているか? 絶望感にさいなまれて、うずくまってしまった。夢の中とはいえ、そんなことってあるか。  人間がこっちに近づくときは、驚かせないのがここのルール。老人がこちらに渡り終えるまで、静かにしておくことにした。 3人がそろった。中央の老人が祝詞のようなものを唱え、それが終わるとかなたは風呂敷を広げて貢物をこちらに差し出した。私は大きな爪で貢物を引き寄せる。かなたは、少しおびえているようだ。上目遣いで身を縮こまらせている。 私がわかるか、かなたん。 声は届かない。姿かたちも違う。わかるわけ、ないか。  ゆっくりと、爪の表側をかなたに近づける。かなたは、そっと、その端に触れた。今度は、かなたを爪の内側に隠すようにして、指の腹でそっとかなたの頭をなでた。 かなたはけげんな表情だったが、逃げ出したりはしなかった。十分だ。これで。私たちは隣にいても、傷つけないし、攻撃しあわない。互いに干渉しない。そうしてきたじゃないか。  ドラゴンがそんな行動に出たのは初めてだったらしく、老人は腰を抜かし、青年は斧を構えていたが、かなたと触れ合ったあと私が再び元の体勢に戻ると、安心したようだった。かなたを引っ張り、行きと同じ順で橋を渡っていった。  言葉も食べ物も何もかも違う世界、かなたはどんな生活を送っているだろうと疑問を覚えた。ましてや耳が聞こえていない中で、どのように暮らしているのか。 さすが夢の中というか。かなたの姿を見たいと思ったら橋の向こうの集落の、さらに家の中なのに、かなたの姿がありありと見て取ることができた。植物を乾燥させて、繊維をとる仕事をしている。木材で繊維をほぐして、糸をつむぐ仕事も。しかし、糸を引き出すのに、力が強すぎて途中でちぎれてしまった。隣で作業する女性に、思い切りはたかれる。言葉で説明される機会が無いから、コツがわからないまま見よう見まねでやってるのだろう。 飯を作れば、煮物を上げるタイミングが悪く芋が生煮えだったり、湯が沸かなかったり、すいとんがグズグズだったり。子がいるようだが、泣いていてもそれに気づけず、後ろからはたかれてようやくそれを知ることができたり。かなたは器用とは言えない生活を送っていた。 仕事も満足にできず、娯楽もない。子守をするかなたに、夫?が暴力をふるうのが日常のようだった。かばう者も助ける者もいない。かなたは「あぁ」とか「おぉ」とか言いながら、土下座して許しを乞うていた。……いや、あれは生命を守るために体を伏せ、暴力が終わるのを待っているという方が正しいか。 夫や、村人の暴力は、昼夜問わず続けられた。耳が聞こえないために不便を被り、何を言ってもわからないから口汚い罵声を浴びせる。かなたはそれらを毎日耐えているのだった。  ある晩、かなたは家出をした。子守に疲れ果て、夜中にひとしきり殴られたかなたは、橋を渡ってこちらに歩いてきた。私は夜行性のドラゴンのため、かなたがこちらに歩いてくるのはすぐにわかった。 かなたの足取りはおぼつかない。しかし、集落での生活に疲れ果て、とにかくどこでもいいから、集落から離れた所に行こうと必死になっていた。その先は、唯一自分を殴らない、巨大なドラゴンだった。 私は腕を伸ばし、橋のこちら側のたもとまで指を差し出した。暗闇の中、橋を渡り切ったかなたは、私の硬い爪に触れると、それに縋りつくようにしてもたれかかり、そのまま指をソファのようにして丸まって寝入ってしまった。私はかなたを起こさないように、注意深く指でかなたをすくい上げ、私の体の方へ抱き寄せた。  翌朝、集落からかなたがいなくなってことで村人がざわついた。かなたを探す声は谷中に響いたが、当然ながらかなたがそれに気づくことは無かった。 日が高く上るころ、村人が橋を渡ってこちらの様子をのぞきに来た。かなたの家出先がバレたのだ。しかし、私がかなたを抱き寄せて離さず、邪悪な口を開けて睨むと、ひっくり返って集落に帰っていった。 私はもはや、かなたを集落に返すつもりは無かった。指の間で平和に眠るかなたを、安心するまで寝かせておきたかったし、村人たちの暴力のことなんてひと時も思い出させたくなかった。  かなたは夕方になって空腹で起きたようだった。誰かに怒られるかと思ったらしく、ひとしきりじたばたしていた。指の中でもぞもぞ動いてくすぐったい。しかし、かなたを殴る者が周りにいないとわかると、少し落ち着いたようだった。 そうさ、かなたん。お前が家出したんじゃなく、私がお前をさらったんだ。だからお前は悪くない。誰もお前を責めないよ。 数日前にかなた自身が持ってきた貢物を爪で引き寄せて指さした。かなたはその意図を理解したようで、少しずつ食い始めた。 私はそれが無性にうれしくて、なんだか踊り出したくなったんだ。かなたが腹いっぱい食い終わり、またすやすやと寝入ったとき、私はもう、がまんできなかった。日が落ち、星が光り出す夜に、私は前足でかなたを抱き上げ、大空へ飛び上がった。かなたは少し驚いたようだったが、自分に加わる力が暴力ではなく上昇の加速度だと気づき、自身の頭を守っていた腕で私の指をぎゅっと握った。固い握手。イテェ。 「きゃーっっ!!きゃっ!きゃっ!!」 かなたが心底楽しそうに声を上げる。風を切り、雲を抜け、星をつかむほど高く。  起きた。 自分のベッドだ。 都合よく、かなたは共有リビングにいた。無言で近づいて対面し、両腕でかなたの肩をつかむ。 「ちょ、ココ?何?」 びっくりした表情のかなたに、かける言葉が見つからない。『無事か?』?違う。『殴られてないか?』?いや、違うって。『耳聞こえてるか?』?何言ってるんだ。 「……何かあった?」 かなたんの真剣な顔。いけない、かなたんを無駄に心配させてしまう。それはいけない。 「……怖い夢見た。一緒に寝て」 「なあんだココぉ!!甘えちゃって!!」 かなたが破顔する。ちょっと恥ずかしいが、ほとんど本当だし、問題ないだろう。 「よしよし、怖かったんだね」 そうだ。こうして、包んで。包まれて。  二人で星をつかみに行こう。


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 pixivで初めて投稿した二次創作小説です。これの前に、「ゆるゆり」の小説があったような気もしますが、まともに完結していないどころかプロットすら成立してないのでノーカンです。

 投稿の時期的には、桐生ココが断続的に休止していた2020年9月~12月を経て、2月11日の収益化1周年、2月17日桐生ココ100万人達成、2月20日かなたんからSwitchとお手紙のプレゼントがあった後です。

 Twitter上で、「 #twinovel 」「 #ホロ140字小説 」をいくつか書いていたのですが、15年ぶりに長い小説を書きたいと思い至りました。かなココは僕に、創作の楽しさを思い出させてくれました。

2022年8月28日日曜日

二次創作小説「女同士の関係」

「女同士の関係」

 この作品は、ホロクリエイター @HOLOcreater0219 の企画第3弾参加作品として、2022年7月2日 01:00に投稿された作品です。

素晴らしい企画を開催していただき、誠にありがとうございます。


宙を舞う天使は、火を吐くドラゴンに憧れて。

女は女に恋をして。


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 ある日の配信を終え、僕は天使の輪と羽根を仕舞って完全な人間形態になる。
 僕は職業天使として天界から修行しに来た身だから、当然天使としての技量は積まなければならないけれど、人間のことをよく知るには人間として生活しなきゃならない。街中を、尖った星形の輪をふわふわ浮かべながら歩いてたら、目立っちゃって修行どころじゃなくなっちゃう。
 それは僕だけじゃなく、耳がついてたり、尻尾がついてたりするホロメンも同じ。お互いに人間として交流した方が、変な気を揉まなくて済むんだよね。ココも、その名で配信しなくなってからは、角と尻尾を見ていない。ちょっと寂しいけれど、どこかに仕事に出かけるときには、ときどき出してるんじゃないかな。
僕の知らないココ。
憧れの。


 『かなた』
唐突に、ココがDiscordのDMを送ってきた。
「7月1日、時間あるか?」
7月1日は金曜日なので、定例のメン限配信がある。それにAZKi先輩の誕生日配信にも出演する予定だから、それも同時視聴したい。
しかし、ココが望むなら、同時視聴はいくらでもリスケが利くし、記念配信の収録は既に終わっているので、時間は作れる。
『あるよ。なんじ?』
『20時くらい』
『いいよ』

 7月1日、20時。「桐生ココ」を知る者で、その日時を意識しない者は少ないだろう。まして、僕のようなアイドルオタクは、そういう日付を一生忘れない。
『同時視聴する?』
何の動画を見るかなんて、あまりに明らかで、無粋すぎて文字になんてできない。
あれから1年。僕もココも、色々なことを経験した。でも、きっと、あれ以上に大きな出来事は、二人の間に無かった。
『うん』
ココの返答は短く、そこにどんな真意が隠されているかはうかがい知れなかった。


 2022年7月1日当日、Discordでの形式的なやり取りの後、ココの部屋に入る。
「かなた、こっち座れよ」
「ココ」
すっぴんのココ。普段のココ。
普段は別々の部屋で暮らし、たまに居間で会うくらい。外出して食事や買い物に行く時もあるけれど、趣味が違うし、やるゲームも違う。
でも、不思議と気が合う僕らは、一緒に何かをするのに、理由は要らない。
いつになく無口なココ。何かのサイトを、マウスをコロコロさせながら、読むでもなしに見ている。
「ココ、どうしたの?」
「ん~……」
曖昧な答え。
とはいえ、“気のおけない仲”というのはこういうものかもしれない。それはそれで、ココの心の置き場所になれているのだと思うと少し誇らしい。
「ココ、僕はいつも、ココと一緒だよ」
僕は、放り出されたココの左手を手繰り寄せた。両手でその手を掴み、指の一本一本を丁寧に包み込むと、爪の他に硬い感触があった。

ペアリング。

簡素なその指輪は、ココのさばさばした性格に似つかわしいように思える。かっこいい。
元々は、事務所の社員さんへの対抗意識から買った、リア充への反抗のしるし。買った当時は、へい民からもホロメンからも、散々イジられたっけ。ただ、ペアリングは二人の間では単発のネタみたいなものだったので、ひとしきり楽しんだ後は、僕もココも、ほとんどつけていない。
「ココ、リング、つけてるんだ」
急に、指輪をつけてこなかった自分の指が気になった。そんなこと、ココの指を触るまで、気づいてすらいなかったのに。
だって、他人に見せるためだけに買ったのに、二人きりの時にもつけるだなんて。ハズいじゃん。
……あれ?
今気づいたけど、ココって最近……よくリングつけて……いたような……?

「かなた」
はっとして、記憶の旅から戻ってきた。
時間は、既に20時を大幅に過ぎている。画面には、You Tubeの画面。
ココは、こちらを目の端で見て、つぶやくように言う。
僕の動揺を知ってか知らずか、ココは僕を見つめて。
「一緒に、見てほしい」
「いいよ。僕も、ココと一緒に見たい」
ココは、左手を包み込む僕の両手の上に、更に右手を重ねた。

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「ココ」
動画をたっぷり2時間見た後、ココは画面をぼうっと見つめたまま、まだ手を細かく震わせていた。
ココは再生中、一瞬たりとも画面から目を離さなかった。
「良いライブだったよ。ココ」
「かなた。私、可愛かったかな」
「最高だったよ!ココ。ココは、この時も、今も、最高のアイドルだよ!」
声が弾む。
本当にそう思うんだもん。ココは、とにかく応援するファンを楽しませることだけをいつも第一に考えて活動してきたし、その精神は今も変わらない。はず。
ココは、僕をちらっと見て、また伏せがちに目をそらした。
「かなた。私は今、もう、アイドルじゃない」
弱弱しい、しかし、明確な否定。
「私は、ファンのみんなが、私のために色々してくれたし、今もそうしてくれてることを知ってる。Ego-surfingをしなくても、聞こえてくる」
「そうだよ!ココは今でも、ファンに好きって言ってもらえてる!だから、今でもアイドルなんだよ!!」
「でも、今、私は、みんなに何も返せない」
ココの震えた声は、ココの真情を示しているようだった。
「私は、もうアイドルじゃない。一人の女だ」
ココが、こちらに向き直る。
角は無い。
ハンパない存在感の尻尾も無い。
ただの、一人の女がいた。
顔を真っ赤にして、歯を噛んでいた。
「かなた、甘えさせて」
「いいよ」
顔の良い僕の半身。
「ココの一番弱い所を見せていいよ」

 ココは、その言葉に、頭を僕の胸に横向きに倒してきた。
角の無いココの側頭部を、頼りない僕の体は受け止めることができた。
「かなた」
ココは独り言のようにつぶやく。
「かなたは“そう”じゃないって、わかってるけど」
「うん」
「でも言わせて。……聞いてほしい」
僕の心臓の拍動が強く、早くなる。
「私、かなたのことが好き」
その告白は、かすれるように、囁くように。
「キスしたい。私だけを、感じてほしい」
僕の鼓動は一層強くなり、重ねられた手に、熱を帯びる二人の汗が、じっとりと溶け合う。
“そう”なんじゃないかな、という、淡い想像は前からあった。引っ越しの後くらいに、過剰なほど僕のことを心配してきたり、一緒に食事する時に、脈絡なく「あーん」してきたり。
そっかあ。
僕にガチ恋しちゃったかあ。愛い奴め。
僕は、ココの体を抱きしめるために、両手で握り合っている手を抜こうとしたが、
「離さないで!お願い、だから……」
ココの声に止められ、逆に固く結びなおした。
心と心を繋ぎ合う。

 「僕も、ココのこと、大好きだよ」
ココのことが好き。ホロメンを含め、僕が家を出てから出会った人のうち、ココはぶっちぎりで一番大好きだ。まるで、自分の分身であるかのよう。ココが楽しいと僕も楽しいし、ココが傷つくと僕も悲しい。
でも僕は、その気持ちが、ココの気持ちとは違うことも知っている。
「かなたは、色んなホロメンと夜中まで遊んだり、色んな人に会ったりしてる。知らないかなたが多すぎて、かなたと『同居してるだけ』の私は、」
ココは、息を整えるために、数秒呼吸をして。
「私は、かなたを、もっと知りたい。欲しい。」
「……ありがとう、ココ」
ココの悲鳴は、僕以外、他の誰にも響かないだろう。理解しあって、同居して、それ以上のことは、誰にも思い至らない。
僕しか知らないココ。
お互いの、唯一の家族。
「愛してくれて、ありがとう、ココ」



数秒の後、ココの頭が浮いて、ココがわたわたし始める。
「ごめん、かなた。ごめん!忘れて!忘れて。ごめん!気持ち悪いよな。嫌だよな。忘れて。お願いだから」
「ココ、僕、今ココを抱きしめたい。手を放して」
急に落ち着かなく、早口になったココに、僕は努めてゆっくりと語りかける。2時間ぶりに解かれた両手には、ココの不安と愛とが、じんじんとした熱となって残っている。
ココは、腕を縮めて体を小さく屈めたので、抱き寄せるとココの体の上に僕が大きく覆いかぶさる姿勢になる。
「ココ。気持ち悪くないよ。ココが僕にくれる気持ち。全部嬉しいよ。ココは、かけがえない僕の家族だよ」
背中を広く、大きく押し撫でる。
「ココ、僕はココを独り占めしたいって、そう思わない。ココは、僕の憧れなんだ。僕は、誰のものでもないココを、今までも見てきたし、これからも見ていたい」
残酷な答えかもしれないけど、天音かなたと桐生ココとの間に、嘘やごまかしは無しだ。
ココは、くぅぅぅぅと甲高い声を上げながら、体をさらに丸めて崩れ落ちてゆく。
「かぁなたぁぁぁ」
「ココ、ありがとう。好きだよ。ココ。ココの気持ち、何よりも嬉しいよ」
ココ。赤ちゃんのように、ああん、ああんと大声を吐き出すココ。ココは、いつからこの気持ちを秘めていただろう。僕が聞いても、いつも有耶無耶にしてたからなあ。
「我慢させちゃって、ごめんね。大好きだよ」
可愛いココ。
「ココの一番を、ありがとうね」
可愛い女。


 背中をゆっくりと撫でながら、薬を塗りこむように、ココに伝える。
「ココ。でもね、ココ。僕、ココのためなら、何でもできるよ。ココ、一緒にお風呂、入ろうよ。明日のご飯も、一緒に作ろう。キスだって、してみようよ。僕は、ココの全部、受け止められるよ」
ココは、ぐず、ぐずと泣き止み、体を起こした。
「なんだよオメー……天使かよ」
「違うよココ。僕は、一人の女だよ」
ココの体が起きてきたところで、その整った顔面が目に入る。この美女に、キスできるのは、世界中で僕一人だけ。
「言っておくけどね!」
そんな優越感に、僕は。
「僕がもしココにガチ恋した時には、覚悟しておいてよねッ!」
キメ顔のウインクで笑って。

「じゃあ、リングつけて。毎日。外でも」
「えっ」
女同士の関係をスタートさせてしまった。


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人気カップリング「かなココ」は、人によって解釈が分かれるのですが、僕は作中のようにココ→かなは恋愛に近く、かな→ココは戦友とかアイドル仲間という意識でとらえています。

小説の書き方として、あまりにかなココが互いに名前呼びすぎと言うのは、他人に指摘されるまで本当に、全然、意識してませんでした。二人が強く思い合っていてほしいなと言う気持ちが溢れすぎてしまったかもしれません。


ホロクリエイター企画は、投稿日が決まっていて、第3回は7月2日だったことから、ちょうど1年前の桐生ココ卒業時のことを思い起こして書きました。

なお、何も関係ありませんが、翌日の7月3日、ある人物がVShojoへの加入を発表、7月8日に天音かなたが引越しを発表しました。僕がこの作品を、それらの事実よりも前に投稿できたのは、あまりにもすごい僥倖だったというべきでしょう。