2022年10月1日土曜日

アニメ感想「リコリス・リコイル」

  シエル先生に強力に薦められたため、見ました。全体として絵が非常にきれいで、特にキャラクターの美麗さは息をのむほどです。

 1話ずつ、その時点で知っている情報だけで感想を書いています。順に見ている人の感想として読んでいただければ幸いです。

 ここに書くかどうか迷ったのですが、各話で僕がどのくらい満足したかを10点満点で採点しました。絵が綺麗なので点数は高めです。



以下、ネタバレ注意。



リコリス・リコイル1話9点

 女の子が銃をパンパン撃ってて可愛いなと思いました。胸がデカいのはあまり好みでないので、千束よりもたきなの方が好みかな。

 変な演技臭さをできるだけ排し、淡々と任務をこなすかっこよさが◎。戦隊ものでもシンプルな名乗りが好きな僕はとても嬉しい。

 専門用語がたくさん出てきたけれど、繋がりと関係が整理整頓されていて理解しやすい。丁寧な作りの話だと思った。


リコリス・リコイル2話6点

 しかし傍若無人だなこの女子高生。機密情報が周りにどう聞こえるかとかを全く気にしないし、周囲もそれを気に留めない。石ころ帽子でもかぶってるかのようだ。

 孤児がどうのというのは1話でも出てきた。この作品は「明るいガンスリ」だと思って見ているからその程度の設定は大丈夫。しかし、国家機関なんだからパスポートくらい取れるようにしてやれよ。

 あまりに当たらない敵の弾、そして当たる千束の弾。MADLAXかなんかかな?


リコリス・リコイル3話8点

 サクラはわかりやすい噛ませ犬だ。サクラとフキ、そして千束との戦闘能力の隔たりを見せることで、千束の有能さが引き立つ。

 千束やたきな、フキなどは人間がかなりできている方で、DAの少女たちは基本的にサクラと同じくらい性根が曲がっているのだろうと考える。DAでは、DAの組織が全てなので、DA内で認められるためには同僚は蹴落としてナンボなのだろう。DAの指令を無視することが信じられないのも同様。

 サクラもそうだが、たきなも大概、小娘だ。理不尽なことについて、組織が「正義であるべき」だなんて思っていた。DA本部での模擬戦で吹っ切るきっかけを作れた。

 千束が噴水周囲でたきなをこれ見よがしに抱き上げたのは、「周りの目なんてどうでもいい。今、たきながしたいことをして」というメッセージに違いない。尊い。

 模擬戦って、そんなすぐにセッティングしてもらえるものなの?予定は無かったよね?


リコリス・リコイル4話10点

 さかなー!

 たきなの笑顔が見られた。DAの精神的枷が外れたたきなが、千束の奔放な明るさに巻き込まれるのにだんだんと慣れていくのが可愛い。

 たきなにも、「可愛い」と言われて喜ぶ感情があるのは幸いなことだ。

 たきなの真面目な性格はそう簡単には変わらない、というか、変わらないでほしいと思う。千束は年間パスポートまで持ちながら、チンアナゴやタツノオトシゴについて何の知識も無い。知識を駆使しながら知的好奇心を働かせるたきなは、やはりちさととは異なる性格だ。しかし、互いを想う気持ちには、性格の違いなんて関係ない。

 ところで、こいつら何歳だろう?


リコリス・リコイル5話5点

 興醒め。これまでの設定台無し。北押上駅の警備ザル、ミズキさん迂闊すぎ、たきなの身のこなしに精彩無し、松下さん(偽)のどんでん返しのために細部を軽視。気に入らない。

 さすがにここまで派手にやっておいて、本当に世間に一切バレないというのは少し虫が良すぎないかねえ。そのへんの警察官も北押上駅に入れるくらい、警備もザルなのに。

 水上バスが東京を走る、ねえ。夢のある話で。どんだけ交通量要ると思っているんだよ。


リコリス・リコイル6話5点

 弾をも避ける千束にジャンケンで挑むなんて、たきな、油断しすぎだろう……と思ってたらやっぱり説明された。いや飛んでくる弾を筋肉の動きと銃口を見て動体視力で避けるくらいでしょ?出す瞬間に腕だけで判別できるに決まってるだろ。手を変えるだの変えないだのの問題ではない。

 今回は千束が敵さんに捕まってる。今回の、真島さん?は素人さんじゃないので若干強いのかもしれないけど、やはり違和感。暗闇の中、逆光の状態で、殺す勢いで走ってくる車に乗ってる真島の銃弾を避けきってこれは、ちょっとアンバランスに過ぎませんかね。

 雑魚を全部倒すときに真島さんだけ立ってる等、カッコつけ描写が多くなってきている。5話と6話で、リコリコを見る際の姿勢が悪い方に変わった。


リコリス・リコイル7話8点

 なるほど、わかった。リコリコの楽しみ方は、こう色々な衣装を千束とたきなが着るのを愛でるというのを主眼にしたら良いんだな。

 ドレス姿の千束すごく可愛い。綺麗と言うよりも、しっかりと小娘感が出ていてとても良い。くるみが入店時に止められてたけど、千束とたきなはなぜ止められなかったんだ?どう見ても未成年だろ。

 アラン機関のペンダントを、千束が常につけていたのは、松波に偶然会ったときに感謝を示すため。宿願が叶って良かったね。


リコリス・リコイル8話9点

 ウン〇回。

 Twitterのつぶやきみたいな演出は、止めたらちゃんと読めるようになってて好感。「おいしいんだけど・・・・・」アニメをコマ送りで見る、古のオタクへの愛を感じる。

 たきなが千束の私生活にどんどん踏み入ろうとする感じ、立場的にも精神的にもバディである感じ。実際、それは必要なんだろうけど、あからさまに顔を赤らめたりベタベタするんじゃなくて、態度や言動の表現でそれを見せるのが素晴らしい。

 千束、あんな絡み方したら、吉松さんも来ないよそりゃあ。何のために会員限定高級クラブに行ってると思ってんだ。


リコリス・リコイル9話10点

 今週もたきなが可愛い。髪の上からマフラーを巻いた後にできる、髪のたわみを好きでない者がいようか?

 わかりやすく傷つくたきな。千束と最後の思い出にデートに出かけるのはとっても可愛い。服を見て、パンケーキ食べて水族館に行くのは、4話で千束に紹介されて楽しかった所をなぞってる。

 たきながデートを主導する時は、スケジュールを管理して予定通りに事を運ぼうとするたきな流。それでも、予定どおり行かないこともある。そんなとき千束の「やりたいことをやる」精神はとても役に立つ。

 結局、たきなは自分と、自分の周囲が大事すぎて、千変万化の世間に対応するのに慣れていない。そこの所、アラン機関に命を拾ってもらった千束は、世のため人のためを心掛けているから柔軟だ。


リコリス・リコイル10話9点

 リコリコ閉店のお知らせ。

 たきなの優先順位は4話で逆転してしまって、DAに戻るのも全て千束のため。たきなの表情は感情を見せないが、その中には千束への強い愛がある。

 千束の晴れ着、とても可愛い。ミカが着せたら、その思いはひとしおだ。

 アラン機関は、人間の才能を何よりも優先する機関だった。それは千束のこれまでの半生の正義とは異なっているけれど、わからないわけじゃない。「ギフテッド」というが、アラン機関はその技術を独占して、民生利用をさせないようにしている。真島がイラつくのもよくわかる。

 でも真島さん、警察署の襲撃時にもわかったとおり、DAの隠蔽って大したことないでしょ?一般の民草は平和ボケしてるかもしれないけど、刺激が全くないほどではないと思うよ。


リコリス・リコイル11話4点

 もはや少女による殺し屋集団リコリスを隠す余裕がなくなったDA。真島による暴露が無くても、普通にバレてただろう。

 フキチーム、もうめちゃくちゃ。所詮小娘。こいつらが因縁の相手だってわかってるはずなのに、司令部はなぜこいつらを同じチームにした?本当にいつも思うけど司令部ガチで無能だよな。

 初心者が銃を初めて持って、リコリスを射殺!!?非常ベル鳴らしたのにエレベータ動いた!?「かっこいいシーン」を描写したいがために、ちょっと全体的に芝居がかりすぎて、せっかくのかっこいいたきなの登場シーンも陰ってしまう。



 リコリス・リコイル12話7点
 たきなとリコリコの面々が参戦して形勢逆転。耳が良い真島の耳元で大きな音を鳴らしてひるませる手法を、描写だけで説明するスピード感を重視した表現。
 たきなの必死さが可愛い。千束との時間が、たきなの最優先事項になっている。DAをクビになった経緯について謝罪を受けても、全く意に介さない態度が出ている。
 たきなが吉松の暗躍を全部説明してくれた。視聴者にとって優しい。アラン機関は本当に金持ちの道楽だった。自身でDAみたいなの作っててもよさそうだけど、そういうのには興味ないのね。「実はカバンの中に替えの心臓有ります」って展開は無いの?
 延空木もDAも、バックドアでUSBメモリ差すのが王道なのね。Walnutもロボタも、同じ技術で張り合っているとしたら、Walnutはロボタの完全上位互換と言えそう。
 リコリスはやはり、ただの戦闘マシーンで、不意打ちや罠にはめっぽう弱いと見える。延空木で真島と再会する千束は、半分「罠でも構わない」と思ってエレベーターを出ただろうが、たきなは絶対にそれに反応して千束を一人にすべきではなかった。

 あんだけ人を殺しておいて、リコリスはかなり抜けている。そのへんも雑な設定だよなあ。
 雑と言えば、リリベルも相当。リコリコでは、リコリスばっかり活躍して、リリベルの存在はほとんど示唆されない。リリベルは他の現場で暗躍しているとして、表舞台でリコリスの後塵を拝しているということは、「テロ組織に狙われる役はリコリスに任せてリリベルは本当に秘密裏に動く」ってことなのかな?だとすれば、リコリスを生かしておいた方が、延空木の事件後にリリベルが白日の下に晒される危険は減るだろうに。
ま、ただの舞台装置だな。

リコリス・リコイル13話8点
 冒頭千束が掴みかかられたあたりから強いプロレス臭。と思ってたら本当にプロレスだった。真島はバランスどうのこうのと言ってたけど、結局のところアランの申し子のクセに「本気で打ち込める何か」を見つけられず暴力に走ったということなのね。暴走族と同じだ。
 あのさ、千束を助けるのがたきなで、サクラを助けるのはフキなら、エリカはたきなと一緒に上がれよ。千束との感動のシーンを演出したいがためにいい加減すぎるだろ。
 喫茶リコリコは千束の居場所なので、千束が生き返ったら再開するってわけね。数話前まで僕らが見ていた、温かいお店が復活。良かった良かった。

 総括
 王道の展開、定番のシチュエーションが連続する作品だった。複雑な設定には、奇をてらった進行は無理がある。安心して見られ、アニメ初心者にも堂々と進められる作品だ。
 おおまかに、3話までの「登場人物の説明パート」4話から9話までの「温かな日常パート」10話以降の「終わらせ展開パート」の3つに分けられる。このような構成も、キャラクター主体のアニメではごく一般的で、ストレスが少ない。
 人を殺せるけど殺さない、表舞台には出てこないけど超強いヒーロー。人殺しみたいなヨゴレ役は大人の男に押し付ければ大丈夫。老人かと思いきや幼女、味方かと思いきや敵、謎に包まれたすごい組織、死ぬ敵、死なない味方。主人公たちの強さを引き立たせるために、やけに弱く描かれるモブ。女の子同士の友情、嫉妬、同性愛。固い組織の人間が知る、普通の女の子と同じような楽しい幸せ。
 面白くて絵が綺麗で演技臭いプロレス、それがリコリス・リコイルだった。


合計97/130点

2022年9月19日月曜日

二次創作小説「ココ、僕と歌おう。」

ココ、僕と歌おう。

ココとかなた、夢うつつ。

 この作品は、2021年3月18日 23:50に投稿された作品です。



~実在のアニメソングを題材にしています。念のため、歌詞をほとんど削っています。。~


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 かなたは気付いた。

これは夢だ。

だって、僕とココが一緒にカラオケに来ることは無い。僕やすいちゃんがいくら誘っても、ココが来たことはない。



 僕とココは8人部屋の普通のカラオケボックスにいる。僕がよく使う店のものだ。部屋の四辺のうち二辺にソファが並んでいて、ソファの無い所に壁と、カラオケの機械が置いてある。部屋の中央に机があり、予約機械や料理のメニュー表が置いてある。ココは僕の左側に座って、何か歌ってる。夢だからか、歌声はよく聞こえない。

僕はいつもどおり壁のコンセントに携帯の充電プラグを差し込んで充電した。

「おめぇ、次何歌う?」

ココの声。いつの間にか、ココは歌い終わっていたみたい。

まあ、いいや。せっかくカラオケに来たし、歌おう。

「き、み、を、の、……予約」

超超有名アニメ映画のエンディングに流れる歌。日本人なら大半が知っている歌で、ココも知っているはずだ。



 「~~」

僕が歌っている間、ココは無表情でカラオケの機械のモニターを眺めている。日本語の歌詞が表示されて、歌い終わった部分は色が変わっていく。英語のテロップとかを流す方法、無いのかな?


「ル~ル~~ル~」

メロディが切り替わったときに、つい主旋律側ではなくコーラス側の音程を歌ってしまう。当たり前だけど、ルルルだなんて、カラオケの機械には表示されてない。主旋律には歌詞があるもんね。

ココが首をかしげながら、こっちを見てきた。「歌詞違わない?」と思ってるかもしれない。

同じような経験は、何回かしている。たいていは、けげんな表情をされたまま終わる。まれに、ごくまれに、主旋律をかぶせてくれる人もいる。


でも、僕はココにはそれを期待しない。お互いに、あまり多くを期待しないのが僕らだから。今までもそうだったし、これからもそうだ。

だから、僕はココの方をちらっと見ただけで、その歌詞が本来のものであるかのように堂々と歌う。

「つめこ~んで~」

サビに入っても、メロディではなく低い音程のパートを歌う。学校の合唱では、「アルト」パートというけど、イタリア語で「アルト」は「高い」って意味らしい。なんか不思議。逆だよね。


ココは、聞いたことのない音程はあきらめて、僕の声を聞くことにしたようだ。歌い甲斐があるっていうのかな。一心に僕の歌を聞いてくれる人がいると、がんばって歌おうという気持ちになる。それがココならなおさらだ。僕の歌をほめてくれて、好きだって言ってくれて。へい民のみんなには悪いけど、僕の一番大事なファンだ。



 歌い終わる。

ココの拍手。少しくすぐったいけど、さすがに慣れた。

「オメー、これ普通の歌?じゃないよな?」

「そうだね、合唱用の音程。普通の主旋律、メインメロディを歌ってる人の裏で、僕はこっちを歌うの」

「ふうん」

ココが合唱をやるとしたら、ソプラノかな、アルトかな。ソプラノも行けると思うけど、声が少し低いから、アルトの方が似合うかな。歌に苦手意識があるみたいだから、練習は必要になるね。まずは苦手意識を取らなくちゃ。


「かなたん」

「何?ココ」

ココはあさっての方を見ながら、僕の名を呼んだ。ココが恥ずかしがる時の仕草だ。かわいい。

「その、合唱っていうの?私たちも………できるんか?」

「~~~~!」

言った。小声だけど、カラオケボックスのCMの音に負けないように、確かに言った。僕の頬が熱くなる。

「できるよ!できる!!ココ!嬉しい!!」

僕はたまらずココの右腕をつかんでぶんぶんと振り回した。大好きなココと、大好きな歌を歌える。こんなに素敵なことは無い。

「何歌う?今の歌でいい?何歌いたい?」

「イテッ!かなたん、早口、早口」

「だぁって~!嬉しいんだもん!!ココ大好き!!」

嬉しいと、ついつい早口になっちゃうよね。

「だ、大好きって、お前、誰にでも言ってるだろ」

「ココは特別だよ~!!」

もちろん、すいちゃんもトワも大好きだし、一緒に歌うのは楽しい。でも、歌が苦手と言っていたココが、僕と一緒に歌うというのが重要なんだ。

「そっ、それに、練習してないから今回は無理だぞ!次な、次!」

次なんて待ってられないよ!歌が難しければ、コールか口上か……

「……そうだなあ、じゃあこれ!」

「聞いたこと無いが」

少し昔の、作画が良いアニメの主題歌を指定する。歌枠でも歌ったこと無い歌。

「これはねえ、サビで拍手するんだよ。いったんスマホで音楽を鳴らすから、拍手のタイミング練習しよう!」

「おっ、おう」

「騒然!鳴り」パァン!



 起きた。

自分のベッドだ。

何だったんだろう。


夢は自分の願望を映すと聞いたことがある。僕は、夢の中でココとカラオケに行っていたから……僕はココと一緒に歌いたいんだ。

ココには何度か頼んで、そのたび断られて、ずっと諦めていたけど、願いが消えたわけじゃない。


ふと思い出して、飛び起きる。PCの中の、あるファルダを呼び出した。

「ソーラン節2」

全部僕の声で収録したソーラン節の、動画にした方のデータが入っている。

僕の声で録った前奏を流し、同時に他の音声データも再生する。


「ドッコイショォ!ドッコイショォ!」「ソーラン!ソーラン!」

そうだよ。ココはデビュー直後から、一緒に歌ってくれていたじゃないか。

主旋律は僕。

「ヤァァ~~レンソーランソーランソーランソーランソーラン」

「ハイ!ハイ!」

合いの手はココ。


ひととおり歌ったら、次は2nd fes.の映像を見よう。




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 pixivで投稿した2本目の二次創作小説です。シリーズを始めてしまったので、ココ視点の次はかなた視点を書きました。


 投稿の時期は、僕が3月10日に前作を投稿した直後、3月14日のホロAmong Usで偏執的ともいえるココのかなたんへの愛を見せつけられたので、触発されて書いたという感じです。

しかし、あまりに完成されたかなココに、妄想をうまく駆動できず、シリーズものとしては続けて書くのを一時中断となりました。

2022年9月11日日曜日

新英国国歌について

 令和4年9月8日、英国の国家元首、エリザベス2世女王が亡くなった。そして即日、チャールズ3世が即位した。

「亡くなる」という表現は、正しいものかどうかわからない。「薨去」とか、「崩御」とかいうべきかもしれない。

 ただ、国歌クラスタにとっては、それよりも大事なことがある。


 英国国歌のタイトルと歌詞が変わる。


 英国国歌「God save the King」のタイトルは、その制定から数度、王の性別により「Queen」と「King」とを行ったり来たりしている。

制定から92年間は、男性王の治世だったから「King」、次にヴィクトリア女王の御代で64年間「Queen」、51年間「King」、そしてエリザベス2世の70年間「Queen」となる。女王の治世が長い!1人の治世期間が男性王の4代分の期間とだいたい同じくらいある。

 更に、「God save the King」の歌詞の中には、「King」以外にも「he」「him」という人称代名詞があり、文法的な正しさのためにこれも変動する。


 以上の二点については、70年前の代替わりの時にも変化した所だが、どうも今回の歌詞変更はそれ以外にも変更された箇所があるようだ。

3番の歌詞に「To sing with heart and voice」とあるが、今回の歌詞変更で「With heart and voice to sing」と変わったようだ。次の節の最後の単語が「King」のため、韻を踏むために「sing」を最後に持ってきたということらしい。

 しかし、「voice」は「Queen」と韻を踏んでいないので、逆に「sing」を「voice」に読み替える必要が無い。不思議に思って調べたら、エリザベス2世の前代ジョージ6世の映像内でも「To sing with heart and voice」と歌っている。

George VI: "God Save the King" (UK National Anthem, Westminster Abbey Choir, 1937 Coronation)

Anthem of the British Empire "God Save the King" (1901-1952)

 思うに、この語順変更はチャールズ3世の時が初めてで、これまでに無かった歌詞変更であろう。


 最後に、エリザベス2世のご冥福をお祈り申し上げます。

2022年9月3日土曜日

二次創作小説「かなたと、星をつかみに。」

かなたと、星をつかみに。

ココとかなた、夢うつつ。

 この作品は、2021年3月10日 18:30に投稿された作品です。


夢の中の話です。


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ココは気づいた。 これは夢だ。 だってここは__ではない。ホロライブハウスも無い。  あたりを見回すと、足元--自分は寝転がっているから、体の下でもある--は土で、十数フィート先は崖になっている。崖には一か所、粗末な吊り橋がかかっており、向こう側と行き来できるようになっている。そこには小さな集落があり、奥は里山になっているようだ。里山に向かって道が伸びているので、その先には大きな村があるのかもしれない。 集落の家々は木造でレンガ造りは無い。吊り橋の縄は、麻か何かでできているようだが、どのくらいの重さが耐えられるのか怪しいものだ。 動こうとしたが、どうも体が重い。腕を動かそうとしたら、土埃が立った。手元にはうろこ。そうだ。私はドラゴンだった。人の気配に誘われて居ついたドラゴン。  集落から人が出てきて、吊り橋をおっかなびっくり渡ってくる。これは貢物を持ってくる儀式。老人と荷物持ちの少女と青年の3人。男性2人は動物の皮をひもで繋げた服(服といっていいのかどうかはわからないが……)を着ているが、少女は首と腰にひもを巻き付けて布を垂らしただけで半裸と言ってさしつかえない状態であった。 青年が最初につり橋を渡り、次に少女。最後に老人が来るようだ。なんだろう、橋を渡っている少女にどこか見覚えがある。小さい背格好に、うつむきがちな顔、ぼさぼさで伸びっぱなしだが美しい銀色の髪、青いひと房。まさか、まさか!お前、かなたんじゃねえか! 思わず、少し身を乗り出す。「ぐおっ」と鳴き声が漏れる。Shit, 人語は発せないか。その音に、青年と対岸の老人は驚いたようだったが、橋を渡っている少女--かなた--は全く気付かないようだった。 かなた、耳、聞こえているか? 絶望感にさいなまれて、うずくまってしまった。夢の中とはいえ、そんなことってあるか。  人間がこっちに近づくときは、驚かせないのがここのルール。老人がこちらに渡り終えるまで、静かにしておくことにした。 3人がそろった。中央の老人が祝詞のようなものを唱え、それが終わるとかなたは風呂敷を広げて貢物をこちらに差し出した。私は大きな爪で貢物を引き寄せる。かなたは、少しおびえているようだ。上目遣いで身を縮こまらせている。 私がわかるか、かなたん。 声は届かない。姿かたちも違う。わかるわけ、ないか。  ゆっくりと、爪の表側をかなたに近づける。かなたは、そっと、その端に触れた。今度は、かなたを爪の内側に隠すようにして、指の腹でそっとかなたの頭をなでた。 かなたはけげんな表情だったが、逃げ出したりはしなかった。十分だ。これで。私たちは隣にいても、傷つけないし、攻撃しあわない。互いに干渉しない。そうしてきたじゃないか。  ドラゴンがそんな行動に出たのは初めてだったらしく、老人は腰を抜かし、青年は斧を構えていたが、かなたと触れ合ったあと私が再び元の体勢に戻ると、安心したようだった。かなたを引っ張り、行きと同じ順で橋を渡っていった。  言葉も食べ物も何もかも違う世界、かなたはどんな生活を送っているだろうと疑問を覚えた。ましてや耳が聞こえていない中で、どのように暮らしているのか。 さすが夢の中というか。かなたの姿を見たいと思ったら橋の向こうの集落の、さらに家の中なのに、かなたの姿がありありと見て取ることができた。植物を乾燥させて、繊維をとる仕事をしている。木材で繊維をほぐして、糸をつむぐ仕事も。しかし、糸を引き出すのに、力が強すぎて途中でちぎれてしまった。隣で作業する女性に、思い切りはたかれる。言葉で説明される機会が無いから、コツがわからないまま見よう見まねでやってるのだろう。 飯を作れば、煮物を上げるタイミングが悪く芋が生煮えだったり、湯が沸かなかったり、すいとんがグズグズだったり。子がいるようだが、泣いていてもそれに気づけず、後ろからはたかれてようやくそれを知ることができたり。かなたは器用とは言えない生活を送っていた。 仕事も満足にできず、娯楽もない。子守をするかなたに、夫?が暴力をふるうのが日常のようだった。かばう者も助ける者もいない。かなたは「あぁ」とか「おぉ」とか言いながら、土下座して許しを乞うていた。……いや、あれは生命を守るために体を伏せ、暴力が終わるのを待っているという方が正しいか。 夫や、村人の暴力は、昼夜問わず続けられた。耳が聞こえないために不便を被り、何を言ってもわからないから口汚い罵声を浴びせる。かなたはそれらを毎日耐えているのだった。  ある晩、かなたは家出をした。子守に疲れ果て、夜中にひとしきり殴られたかなたは、橋を渡ってこちらに歩いてきた。私は夜行性のドラゴンのため、かなたがこちらに歩いてくるのはすぐにわかった。 かなたの足取りはおぼつかない。しかし、集落での生活に疲れ果て、とにかくどこでもいいから、集落から離れた所に行こうと必死になっていた。その先は、唯一自分を殴らない、巨大なドラゴンだった。 私は腕を伸ばし、橋のこちら側のたもとまで指を差し出した。暗闇の中、橋を渡り切ったかなたは、私の硬い爪に触れると、それに縋りつくようにしてもたれかかり、そのまま指をソファのようにして丸まって寝入ってしまった。私はかなたを起こさないように、注意深く指でかなたをすくい上げ、私の体の方へ抱き寄せた。  翌朝、集落からかなたがいなくなってことで村人がざわついた。かなたを探す声は谷中に響いたが、当然ながらかなたがそれに気づくことは無かった。 日が高く上るころ、村人が橋を渡ってこちらの様子をのぞきに来た。かなたの家出先がバレたのだ。しかし、私がかなたを抱き寄せて離さず、邪悪な口を開けて睨むと、ひっくり返って集落に帰っていった。 私はもはや、かなたを集落に返すつもりは無かった。指の間で平和に眠るかなたを、安心するまで寝かせておきたかったし、村人たちの暴力のことなんてひと時も思い出させたくなかった。  かなたは夕方になって空腹で起きたようだった。誰かに怒られるかと思ったらしく、ひとしきりじたばたしていた。指の中でもぞもぞ動いてくすぐったい。しかし、かなたを殴る者が周りにいないとわかると、少し落ち着いたようだった。 そうさ、かなたん。お前が家出したんじゃなく、私がお前をさらったんだ。だからお前は悪くない。誰もお前を責めないよ。 数日前にかなた自身が持ってきた貢物を爪で引き寄せて指さした。かなたはその意図を理解したようで、少しずつ食い始めた。 私はそれが無性にうれしくて、なんだか踊り出したくなったんだ。かなたが腹いっぱい食い終わり、またすやすやと寝入ったとき、私はもう、がまんできなかった。日が落ち、星が光り出す夜に、私は前足でかなたを抱き上げ、大空へ飛び上がった。かなたは少し驚いたようだったが、自分に加わる力が暴力ではなく上昇の加速度だと気づき、自身の頭を守っていた腕で私の指をぎゅっと握った。固い握手。イテェ。 「きゃーっっ!!きゃっ!きゃっ!!」 かなたが心底楽しそうに声を上げる。風を切り、雲を抜け、星をつかむほど高く。  起きた。 自分のベッドだ。 都合よく、かなたは共有リビングにいた。無言で近づいて対面し、両腕でかなたの肩をつかむ。 「ちょ、ココ?何?」 びっくりした表情のかなたに、かける言葉が見つからない。『無事か?』?違う。『殴られてないか?』?いや、違うって。『耳聞こえてるか?』?何言ってるんだ。 「……何かあった?」 かなたんの真剣な顔。いけない、かなたんを無駄に心配させてしまう。それはいけない。 「……怖い夢見た。一緒に寝て」 「なあんだココぉ!!甘えちゃって!!」 かなたが破顔する。ちょっと恥ずかしいが、ほとんど本当だし、問題ないだろう。 「よしよし、怖かったんだね」 そうだ。こうして、包んで。包まれて。  二人で星をつかみに行こう。


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 pixivで初めて投稿した二次創作小説です。これの前に、「ゆるゆり」の小説があったような気もしますが、まともに完結していないどころかプロットすら成立してないのでノーカンです。

 投稿の時期的には、桐生ココが断続的に休止していた2020年9月~12月を経て、2月11日の収益化1周年、2月17日桐生ココ100万人達成、2月20日かなたんからSwitchとお手紙のプレゼントがあった後です。

 Twitter上で、「 #twinovel 」「 #ホロ140字小説 」をいくつか書いていたのですが、15年ぶりに長い小説を書きたいと思い至りました。かなココは僕に、創作の楽しさを思い出させてくれました。

2022年8月28日日曜日

二次創作小説「女同士の関係」

「女同士の関係」

 この作品は、ホロクリエイター @HOLOcreater0219 の企画第3弾参加作品として、2022年7月2日 01:00に投稿された作品です。

素晴らしい企画を開催していただき、誠にありがとうございます。


宙を舞う天使は、火を吐くドラゴンに憧れて。

女は女に恋をして。


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 ある日の配信を終え、僕は天使の輪と羽根を仕舞って完全な人間形態になる。
 僕は職業天使として天界から修行しに来た身だから、当然天使としての技量は積まなければならないけれど、人間のことをよく知るには人間として生活しなきゃならない。街中を、尖った星形の輪をふわふわ浮かべながら歩いてたら、目立っちゃって修行どころじゃなくなっちゃう。
 それは僕だけじゃなく、耳がついてたり、尻尾がついてたりするホロメンも同じ。お互いに人間として交流した方が、変な気を揉まなくて済むんだよね。ココも、その名で配信しなくなってからは、角と尻尾を見ていない。ちょっと寂しいけれど、どこかに仕事に出かけるときには、ときどき出してるんじゃないかな。
僕の知らないココ。
憧れの。


 『かなた』
唐突に、ココがDiscordのDMを送ってきた。
「7月1日、時間あるか?」
7月1日は金曜日なので、定例のメン限配信がある。それにAZKi先輩の誕生日配信にも出演する予定だから、それも同時視聴したい。
しかし、ココが望むなら、同時視聴はいくらでもリスケが利くし、記念配信の収録は既に終わっているので、時間は作れる。
『あるよ。なんじ?』
『20時くらい』
『いいよ』

 7月1日、20時。「桐生ココ」を知る者で、その日時を意識しない者は少ないだろう。まして、僕のようなアイドルオタクは、そういう日付を一生忘れない。
『同時視聴する?』
何の動画を見るかなんて、あまりに明らかで、無粋すぎて文字になんてできない。
あれから1年。僕もココも、色々なことを経験した。でも、きっと、あれ以上に大きな出来事は、二人の間に無かった。
『うん』
ココの返答は短く、そこにどんな真意が隠されているかはうかがい知れなかった。


 2022年7月1日当日、Discordでの形式的なやり取りの後、ココの部屋に入る。
「かなた、こっち座れよ」
「ココ」
すっぴんのココ。普段のココ。
普段は別々の部屋で暮らし、たまに居間で会うくらい。外出して食事や買い物に行く時もあるけれど、趣味が違うし、やるゲームも違う。
でも、不思議と気が合う僕らは、一緒に何かをするのに、理由は要らない。
いつになく無口なココ。何かのサイトを、マウスをコロコロさせながら、読むでもなしに見ている。
「ココ、どうしたの?」
「ん~……」
曖昧な答え。
とはいえ、“気のおけない仲”というのはこういうものかもしれない。それはそれで、ココの心の置き場所になれているのだと思うと少し誇らしい。
「ココ、僕はいつも、ココと一緒だよ」
僕は、放り出されたココの左手を手繰り寄せた。両手でその手を掴み、指の一本一本を丁寧に包み込むと、爪の他に硬い感触があった。

ペアリング。

簡素なその指輪は、ココのさばさばした性格に似つかわしいように思える。かっこいい。
元々は、事務所の社員さんへの対抗意識から買った、リア充への反抗のしるし。買った当時は、へい民からもホロメンからも、散々イジられたっけ。ただ、ペアリングは二人の間では単発のネタみたいなものだったので、ひとしきり楽しんだ後は、僕もココも、ほとんどつけていない。
「ココ、リング、つけてるんだ」
急に、指輪をつけてこなかった自分の指が気になった。そんなこと、ココの指を触るまで、気づいてすらいなかったのに。
だって、他人に見せるためだけに買ったのに、二人きりの時にもつけるだなんて。ハズいじゃん。
……あれ?
今気づいたけど、ココって最近……よくリングつけて……いたような……?

「かなた」
はっとして、記憶の旅から戻ってきた。
時間は、既に20時を大幅に過ぎている。画面には、You Tubeの画面。
ココは、こちらを目の端で見て、つぶやくように言う。
僕の動揺を知ってか知らずか、ココは僕を見つめて。
「一緒に、見てほしい」
「いいよ。僕も、ココと一緒に見たい」
ココは、左手を包み込む僕の両手の上に、更に右手を重ねた。

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「ココ」
動画をたっぷり2時間見た後、ココは画面をぼうっと見つめたまま、まだ手を細かく震わせていた。
ココは再生中、一瞬たりとも画面から目を離さなかった。
「良いライブだったよ。ココ」
「かなた。私、可愛かったかな」
「最高だったよ!ココ。ココは、この時も、今も、最高のアイドルだよ!」
声が弾む。
本当にそう思うんだもん。ココは、とにかく応援するファンを楽しませることだけをいつも第一に考えて活動してきたし、その精神は今も変わらない。はず。
ココは、僕をちらっと見て、また伏せがちに目をそらした。
「かなた。私は今、もう、アイドルじゃない」
弱弱しい、しかし、明確な否定。
「私は、ファンのみんなが、私のために色々してくれたし、今もそうしてくれてることを知ってる。Ego-surfingをしなくても、聞こえてくる」
「そうだよ!ココは今でも、ファンに好きって言ってもらえてる!だから、今でもアイドルなんだよ!!」
「でも、今、私は、みんなに何も返せない」
ココの震えた声は、ココの真情を示しているようだった。
「私は、もうアイドルじゃない。一人の女だ」
ココが、こちらに向き直る。
角は無い。
ハンパない存在感の尻尾も無い。
ただの、一人の女がいた。
顔を真っ赤にして、歯を噛んでいた。
「かなた、甘えさせて」
「いいよ」
顔の良い僕の半身。
「ココの一番弱い所を見せていいよ」

 ココは、その言葉に、頭を僕の胸に横向きに倒してきた。
角の無いココの側頭部を、頼りない僕の体は受け止めることができた。
「かなた」
ココは独り言のようにつぶやく。
「かなたは“そう”じゃないって、わかってるけど」
「うん」
「でも言わせて。……聞いてほしい」
僕の心臓の拍動が強く、早くなる。
「私、かなたのことが好き」
その告白は、かすれるように、囁くように。
「キスしたい。私だけを、感じてほしい」
僕の鼓動は一層強くなり、重ねられた手に、熱を帯びる二人の汗が、じっとりと溶け合う。
“そう”なんじゃないかな、という、淡い想像は前からあった。引っ越しの後くらいに、過剰なほど僕のことを心配してきたり、一緒に食事する時に、脈絡なく「あーん」してきたり。
そっかあ。
僕にガチ恋しちゃったかあ。愛い奴め。
僕は、ココの体を抱きしめるために、両手で握り合っている手を抜こうとしたが、
「離さないで!お願い、だから……」
ココの声に止められ、逆に固く結びなおした。
心と心を繋ぎ合う。

 「僕も、ココのこと、大好きだよ」
ココのことが好き。ホロメンを含め、僕が家を出てから出会った人のうち、ココはぶっちぎりで一番大好きだ。まるで、自分の分身であるかのよう。ココが楽しいと僕も楽しいし、ココが傷つくと僕も悲しい。
でも僕は、その気持ちが、ココの気持ちとは違うことも知っている。
「かなたは、色んなホロメンと夜中まで遊んだり、色んな人に会ったりしてる。知らないかなたが多すぎて、かなたと『同居してるだけ』の私は、」
ココは、息を整えるために、数秒呼吸をして。
「私は、かなたを、もっと知りたい。欲しい。」
「……ありがとう、ココ」
ココの悲鳴は、僕以外、他の誰にも響かないだろう。理解しあって、同居して、それ以上のことは、誰にも思い至らない。
僕しか知らないココ。
お互いの、唯一の家族。
「愛してくれて、ありがとう、ココ」



数秒の後、ココの頭が浮いて、ココがわたわたし始める。
「ごめん、かなた。ごめん!忘れて!忘れて。ごめん!気持ち悪いよな。嫌だよな。忘れて。お願いだから」
「ココ、僕、今ココを抱きしめたい。手を放して」
急に落ち着かなく、早口になったココに、僕は努めてゆっくりと語りかける。2時間ぶりに解かれた両手には、ココの不安と愛とが、じんじんとした熱となって残っている。
ココは、腕を縮めて体を小さく屈めたので、抱き寄せるとココの体の上に僕が大きく覆いかぶさる姿勢になる。
「ココ。気持ち悪くないよ。ココが僕にくれる気持ち。全部嬉しいよ。ココは、かけがえない僕の家族だよ」
背中を広く、大きく押し撫でる。
「ココ、僕はココを独り占めしたいって、そう思わない。ココは、僕の憧れなんだ。僕は、誰のものでもないココを、今までも見てきたし、これからも見ていたい」
残酷な答えかもしれないけど、天音かなたと桐生ココとの間に、嘘やごまかしは無しだ。
ココは、くぅぅぅぅと甲高い声を上げながら、体をさらに丸めて崩れ落ちてゆく。
「かぁなたぁぁぁ」
「ココ、ありがとう。好きだよ。ココ。ココの気持ち、何よりも嬉しいよ」
ココ。赤ちゃんのように、ああん、ああんと大声を吐き出すココ。ココは、いつからこの気持ちを秘めていただろう。僕が聞いても、いつも有耶無耶にしてたからなあ。
「我慢させちゃって、ごめんね。大好きだよ」
可愛いココ。
「ココの一番を、ありがとうね」
可愛い女。


 背中をゆっくりと撫でながら、薬を塗りこむように、ココに伝える。
「ココ。でもね、ココ。僕、ココのためなら、何でもできるよ。ココ、一緒にお風呂、入ろうよ。明日のご飯も、一緒に作ろう。キスだって、してみようよ。僕は、ココの全部、受け止められるよ」
ココは、ぐず、ぐずと泣き止み、体を起こした。
「なんだよオメー……天使かよ」
「違うよココ。僕は、一人の女だよ」
ココの体が起きてきたところで、その整った顔面が目に入る。この美女に、キスできるのは、世界中で僕一人だけ。
「言っておくけどね!」
そんな優越感に、僕は。
「僕がもしココにガチ恋した時には、覚悟しておいてよねッ!」
キメ顔のウインクで笑って。

「じゃあ、リングつけて。毎日。外でも」
「えっ」
女同士の関係をスタートさせてしまった。


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人気カップリング「かなココ」は、人によって解釈が分かれるのですが、僕は作中のようにココ→かなは恋愛に近く、かな→ココは戦友とかアイドル仲間という意識でとらえています。

小説の書き方として、あまりにかなココが互いに名前呼びすぎと言うのは、他人に指摘されるまで本当に、全然、意識してませんでした。二人が強く思い合っていてほしいなと言う気持ちが溢れすぎてしまったかもしれません。


ホロクリエイター企画は、投稿日が決まっていて、第3回は7月2日だったことから、ちょうど1年前の桐生ココ卒業時のことを思い起こして書きました。

なお、何も関係ありませんが、翌日の7月3日、ある人物がVShojoへの加入を発表、7月8日に天音かなたが引越しを発表しました。僕がこの作品を、それらの事実よりも前に投稿できたのは、あまりにもすごい僥倖だったというべきでしょう。