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2022年6月12日日曜日

声優を交代できない配信勢Vについて

 VTuber、または架空のキャラクター(以下、VCという。)は、結局、現在の形に落ち着いたのである。

それがなぜかを説明してみよう。


 VCは基本的に動画共有サイトにて活動をするが、その態様は「動画勢」と「配信勢」に大別される。「動画勢」は、編集済みの動画をアップロードしてその視聴数によって広告料を稼ぐ者、「配信勢」は編集をしていない比較的長時間の配信で広告料と投げ銭を稼ぐ者だ。


 前者「動画勢」は、いかにクオリティの高い動画を作れるかが、その価値を左右する。面白い動画を量産できれば、それだけ人気になると考えられる。動画の内容が面白ければ、究極的には、声優は交代可能で、非公開の声優が何らかの不祥事を起こしたところで、VCに影響が及ばない。しかし、動画勢には、ああ、あまりにも巨大で膨大なライバルがいる。「アニメ」だ。動画勢は、究極的にはアニメの面白さを超えられるかどうか、アニメにできないことが見せられるかが価値を決めると言って問題ないと考える。例えば、日雇礼子は、あいりん地区のドヤを紹介するなどしていて、非常に面白い。では、「普通」の、企業がオーディションで声優を見つけ、ガワを用意するタイプのVCに、その価値が作り出せるのかというと、まず不可能である。頻繁に脚本を書いて、それをVCが読んで、演技をして、編集して、アップロード。それらは非常に手間がかかるわりに、登場人物が限られ、ストーリー性に乏しいものになることは必定だ。

 見目麗しいキャラクターを作ったところで、ワンピースに勝てるのか。名探偵コナンに、プリキュアに勝てるか。……無理である。

 なお、VC自体を売り込むのではなく、特定の企業や地域に紐づけられたキャラクターなら、十分に価値がある。要するに、ひこにゃんやふなっしーのようなものだ(ふなっしーは非公認だけど)。企業の例では、サントリーの燦鳥ノムが人気を博した。


 では、後者、「配信勢」には何が求められるだろうか。配信の利点は、リアルタイムでコメントと会話することができる所だ。特筆する特技や、面白い特徴等が無く、コメントと会話をするだけしかできない。

 配信は、どうしても大きな展開は無く、毎回受けるネタというものは原理的に存在しえない。となると、「配信勢」の持ち味はどうしても「面白い会話を、毎回できるか」ということにかかってくる。これは、アニメでは非常に難しく、かつ、オーディションタレントには可能なことだ。2014年に「みならいディーバ(※生アニメ)」という、声優の動きをモーションキャプチャで撮りVCを動かす番組があったが、声優は俳優であって丁々発止の会話をする特技を持った人ではないというのが如実にわかる内容だった。ネットラジオでやれ。

 さて、「配信勢」はコメントとの会話によって価値が発揮される。しかし、配信内の長い長い会話は、VCに設定してある情報だけでは間が持たない。どうしても、それに声を当てている人間(以下、魂という。)の話になってしまう。こうした経緯があるため、配信勢のVCは基本的に魂と融合し不可分なものとなる。

 配信勢は、アイドル性と非常に強い親和性がある。アイドルの本質は、「物語」だ。始まりと終わりがあり、その間ずっと連続する一連の言動が「物語」である。VCと融合した魂は、日々生活をしつつ。高頻度で配信を行い、コメントと会話をする。理想的なアイドルの姿である。しかも、アイドルは「応援サービス」である。視聴者はアイドルを無限に褒めることができる。これは投げ銭システムとこの上なく相性が良い。世界のスパチャランキング上位が、VTuberで占められるのはごく当然のことと言える。これを利用すれば、企業によるVCでのマネタイズが可能になる。


 以上によって、動画勢ではなく配信勢のみが、他のコンテンツに対して優位性を持ちつつマネタイズすることができている。

 過去、「生身の人間と切り離されているため云々」という言説があったが、その理論が通用するのは「動画勢」のみで、前述のとおり、その人気は限られた範囲にとどまるため、現在のメーンストリームではおよそ見当違いと言うべきであろう。例えば「配信勢」はそのアイデンティティは活動の過程で必ず(そう、必ず)魂と融合する。それを考えれば、「声優の変更」だなんてのは全くナンセンスであることは自明である。

2022年1月22日土曜日

VTuberを既知の概念で説明するなら

  この記事で書くことは、VTuberを推す者にとって、著しく不愉快かもしれない。

 以前に書いたような、ホロメンを名指しで批判する内容ではないが、むしろVTuberの価値自体を毀損する可能性をはらんでいる。


 上記を踏まえて、それでも読もうという者は、この下に白字で書いたから読むと良い。致命的な部分は、※から※までの部分に書いてある。

 なお、僕は現在、天音かなたと大神ミオと桃鈴ねねと白上フブキのメンバーシップに入っており、また桃鈴ねねのASMR歌枠を聞きながらこれを書いていることを表明しておく。

☆令和4年1月22日追記

 大幅に追加し、また伏字を解除しました。



 アインシュタインは言った。

『ものごとはできるかぎりシンプルにすべきだ。しかし、シンプルすぎてもいけない。』

僕が新しい概念に出会ったとき、それへの僕の姿勢を決めるために、新しい概念をできるだけ簡潔に記述したくなる。

アイドルを「神」(多神教における神。特に日本の神社に祀られている神)と記述したのは、まさにそれだ。

女性のVTuberを記述するなら、既知のどんな存在が最も簡潔かつ明快に説明できるだろうか。



 女性VTuberのことは、それを揶揄する者から「キャバクラ」と言われることが多い。これは、VTuberを追っていない者が知っているのが「雑談をしている」「金を投げられる」という2点のみだからだ。

界隈の外には、所詮「その程度」の情報しかないのも無理は無い。興味がそもそも無いからだ。

VTuberに興味が無い者に(というか、どの界隈でも同じだが)、少しでもVTuberを紹介しようとしたら、まず金銭的な情報から入るのが早道だ。だから界隈の外では「金を稼いでいる」→「その手段が雑談だ」という浅い所で分析が止まってしまう。


 VTuberは、キャバクラと本質的に異なるところがいくつもある。

まず、いくら見ても基本的に無料であること。キャバクラは時間料金制である。

次に、VTuberなら同じ相手と長時間喋ることができる。キャバクラは交代制であり、法外な金額を払わない限り、はがされる。

更にキャバクラは、「こちらの話を聞いてもらう」のであって、VTuber本人の話をこちらが聞くスタイルとは決定的に異なる。

他にもお触りがあるかどうかとか、ワンチャンあるかどうかとか、いくつもあるが、とにかく致命的に異なる。



 キャバクラではないのなら、VTuberとは、いったい、何なのか。僕らはVをどのように扱ったらよいのか。また、気持ちの良い推し活をするために、何を念頭に置き、重要視し、何を無視すべきなのか。










 女性VTuberは、「オタサーの姫」に似ている。


僕は基本的に女性のVTuberを見ているので、「姫」という表現になる。もしかしたら、性別を反転させれば男性VTuberについても同じことが言えるかもしれないが、これは推測なので断言は避けよう。



・VTuberはファンと非常に頻繁に交流をすることができる。

・VTuberはファンに、公開する情報を制限することができ、また裏垢を持っていて、そちらで情報を出すことができる。

・ファンはVTuberに貢ぐ。

・ファンはVTuberの機嫌を損ねないように、褒める。

・ファンはVTuberの公開されていない情報を知ろうとする。

・ファンは自治ルールを勝手に作り出し、そのルールに外れた者を叩く。


 これらは、サービスの提供を適切に行おうとする配信者側と、その活動をできるだけ快適にしようと考えるファンとが、色々考えて結果的にこうなっているので、最初から「オタサーの姫」ムーブをしようとしてファンが動いているのではない。僕自身、「オタサーの姫」がめちゃくちゃに嫌いなので、これは命を懸けて言える。


僕は大学時代に入っていたオタサークルの後輩にオタサーの姫が4つ下にいて、僕の3つ下の後輩複数がその取り巻きとなっていた。

その取り巻く様子が非常に醜く、またTwitterにて僕が姫にリプライを飛ばした際に非常に不快な経験をしたので、オタサーの姫の構造に敏感になっている。


 VTuberとそのファンは、構造上オタサーの姫とその取り巻きに酷似している。それを発見したとき、絶望と諦めが僕を襲ったものだ。




 しかし、決めている。僕は彼女らを推すと。


 まず、VTuberは「ロール」なので、その「中身」について言及することは厳禁である。

 例えば「おしん」が放映されて主人公が飢えていた時期に、TV局に米が届いたとのことだが、これはおしんのロールとTV局にいる俳優との区別がつけられていないから起こったことだ。

僕らはロールと中身を別にして考えることができる。そうだろう?


 次に、VTuberが建前を設けた時には、「そういうルールである」と全てを承諾する必要がある。

 例えば将棋を指すときに、一手目に飛車を「ぶ~~ん」と掴んで「グワシャー」と相手の玉将にぶち込むことは、物理的にはできる。しかし、そんなことをしても面白くもなんともない。

ゲームを面白くするためのルールは守る必要がある。


 アイドルVTuberを推すためには、「褒める」必要がある。

 これには色々と理由があるが、根本的には「アイドルは、褒めさせるサービスだから」に集約される。褒めてこそ面白い・価値のある界隈だ。

 例えばマスゲームは全員が一致して動く必要がある。「俺は自由だ~」と変な動きをすると、全体にとって不利益となる。全員が一致して褒めているからこそ、得られるものがある。それに外れた者は荒らしであり、つまみ出されるべき存在だ。



 アイドルVTuberを、「サークルの姫」とすると、謎であった様々なV界隈の不文律が説明できる。


 まず、「伝書鳩がなぜダメか」。こんなの、他のサークルの姫のことを話題に出したら、場の一体感が削がれるからに決まっている。

 次に、「なぜVの中身の人物に交際相手がいても問題ないか」。サークルの姫はロールであり、その中身がどうなっていようと、配信等で見せる建前がロールの本体だからだ。

 更に、「なぜ素性を隠さねばならないのか」。これは、姫たちには手を出さないという了解のもと姫扱いしているからだ。

 そして僕が一番知りたかった、「なぜV同士の会話にファンが横やりを入れてはいけないか」。

サークルの姫同士が語っている所に、横からリプライを投げ込むということは、姫との間にある不可視の垣根を取り払ってしまうことに繋がる。姫に積極的に影響を与えてはならないという了解があるのだ。


 さて、アイドルが何か不祥事みたいなことを起こした場合、僕らはそれを糾弾べきだろうか?

いや、違う。

僕らは「姫扱い」を楽しんでいるのだ。それを自覚するならば、どんなにひどい言い訳であろうと、バレバレの嘘であろうとも、それを受け入れるべきだ。それがV界隈を最も効率よく楽しむ方法である。

 いくら、佐藤希が(Vではないが……)誰かと同棲していることを否定した所で、苦しい言い訳は通らない。

しかし、ファンはそういう「どうでもいいこと」は無視して姫を推しているのだ。「清楚で無垢」という設定の佐藤を推しているのだ。それにファンにだって、それぞれに生活がある。佐藤が誰と交際していようと、ファンの生活に大きい影響は与えない。





 僕らは「サークルの姫を推している」ということに自覚的になるべきだ。

 「なんだかわからないもの」を推しているのでは、結局、メン限の価値等について説明できないだろう。

 そして姫を誇るべきだ。堂々と推せ。サークルの姫が、一生そのサークルに所属しているとは限らないと、知っているだろう。


 メン限についてわかりづらい人がいるかもしれないから補足する。

 いつもの配信が、誰でも姫を囲むのに参加できる広場で行われている雑談とするならば、メン限は鍵をかけた会議室で行われる内緒話だ。

 内緒話の内容を周りに言いふらす者は著しく信用を無くす。メン限壁紙等を外に持ち出すのも同じだ。



 鳴神裁を見ていて、内容は面白いと思っていたのだが、一貫して、「それをしたVTuberは、いったい何のルールを破ったのか?」「バチャ豚は、どのように悪いことをしているのか?」という部分について説明が無い。

彼の道徳でもって、独裁的に裁いているが、では何が理想のVTuberなのかは語られない。

「アイドルVとは、サークルの姫である」という位置づけは、鳴神の道徳観のアンチテーゼたりうる。まあそもそもテーゼが明文化されてないから反論も何も無いんだけど。

 なんか嘘ついたり不倫したりするのはいけない、というガキの理屈で裁いているわけだが、結局Vって褒めサービスの中心にいるってだけで、「鳴神が安心して褒めることができる対象」ではないんだよな。DWUだって、牡丹きいだって、それを褒めるファンがいる。その界隈に土足で上がりこんで姫を貶したところで、姫扱い自体が悪いわけではないはずだ。


 僕の好きな言い回しを使えば、「そういうゲームなんだよ」だ。




 心境の変化から、普通に公開するように直しました。

2022年1月9日日曜日

令和3年12月tweet(ホロライブ関連)

 https://twitter.com/nattosansai/status/1465885654810652679

少なくとも日本のアイドルは「神」である。唯一神GODではなく、多神教の神。ライブ会場は神社、ライブは祭。

グッズを買ったりスパチャ投げるのを「お布施」と言うことがある。これは実情に即した適切な表現だ。

「先週A神社に参詣して、今週はB神社に参詣する」が不自然でないのは、多神教だから。


多神教でなく、唯一神を崇める人は、油を注がれたり洗礼を受けたりすると、信教が固定される。

アイドルを「唯一神」として見る人は、複数のアイドルのライブに行く者を「浮気者」となじるかもしれないが、そもそも日本のアイドルは多神教の神々として売り出されてるのだから、的外れな指摘だ。


https://twitter.com/nattosansai/status/1479386890499674118

神社では、みんなで神様を祀ってお祭りを楽しんで、願い事をするときにはお布施や賽銭を投げ、お布施で境内の寄進の名前を連ねて、認知されなくても気に病まず、神社や神輿が立派になると嬉しくて、たまに他の神社にお賽銭投げに行く。

全部アイドルVTuberで説明可能。事実上同じなのよ(持論)

それでいて、思うように行かないことや夢のような奇跡、信念と努力、成長と切磋琢磨、紡がれるストーリーがあるから、アイドルを推すのはやめられないんだよね


https://twitter.com/nattosansai/status/1467499589981077504

「有名人同士のリプライの応酬に他人がリプライをする」の何が良くないのか、俺はわからないので誰か教えてくれ。

有名人のツイートそのものにはリプライしてよくて、なぜツリーになるとダメなのか。

https://twitter.com/nattosansai/status/1466477888350285827

「Twitterで、ホロメン同士がリプライで会話している所に割り込みリプライ飛ばすな」ってハナシ、僕は「避けるべき行為」として定義したくない。

一言でいうと「自治厨乙」だ。

同じ一個のTwitter垢として対等だぞ。ホロメンをなぜ特別扱いする必要がある?

単に「お前が見たくない」ってだけだろ。


https://twitter.com/nattosansai/status/1467518179954262016

船長と掃除屋の応酬を例に出しますと、

画像1(末尾を選択した場合)では、両者のリプが全て表示されますが、

画像2(途中を選択した場合)では、結局省略されます。

「画像1」を成果物として作る場合、最終的に途中の他人のリプライは見えなくなるので、別に問題ないのでは?と考えます。




https://twitter.com/nattosansai/status/1473223988814188555

かなココのクリスマスはだな、

ココは家族と過ごすから帰省するんだよ。で24夜は二人とも配信する。

かなたんは開始Tweetと同時に「配信始めた」てDMを送る。これは互いの部屋でドタバタして隣の部屋に聞こえないようにする日常の作業(妄想)。ココはそのとき帰省してるから、その作業は不要だけど、つい、慣れでDM送っちゃうんだよね。

でもココは、それを指摘せずに、DMに「了解」といつもの通り送るんだよ。律儀に自分も始めるとき「配信開始」って送ってさ。

かなたんの「配信おわり」のDMの後、ココから「まあ私部屋にいないけどな」と送られてきて、かなたんは初めて気づく。でも、この二人はそんなこと今更大して面白くないから、「wwwwwwwww」「LMAO」とだけ往復して、「来月どこ旅行する?」「たまには北国もいいな〜。天気が良いところがいい!」「それは運次第だな」「うっ、運次第だと、やばいかも……」と普段どおりの会話を始めるんだ。


この妄想マジでクリスマス何も関係ないな



https://twitter.com/nattosansai/status/1472910510597505025

どこかで見たような顔だ





2021年12月11日土曜日

ホロライブの二次創作設定2(ポルカ)

見てぇ…ポルカがケーキ屋のバイトで寒空の中震えてケーキを売り、クタクタになりながら売れ残ったケーキ1つもらって帰宅し、玄関で靴をぬぐ時によろけてケーキの箱を踏み抜くとこが見てぇよ…


 という「かにぼなーら」氏のツイートが刺さったので、アレンジして、思いつくがままに一篇書いてみました。かわいそうは可愛い。

正確には「設定」というわけではないですが……まあいいか。


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 時刻は、12月25日0時。人もまばらとなった樺幌駅北口の地下通路の中、赤い帽子を目深にかぶった女がいた。

「ケーキ……ケーキ、要りませんか……?」

ポルカは、クリスマスケーキを売っていた。道端や駅の中ではないのは、警官に捕まるからである。そう店長に教えられた。

「ケーキ要りませんか?甘くておいしい、クリスマスケーキだよ。」

足を止める者はいない。手に白い立方体のようなものを持った者すらいる。彼らに、この3,500円の菓子を売りつけるのは、無理と言うものだ。


 ポルカは11月分の家賃と12月分の家賃をまだ支払っていない。食費と光熱費、歌の月謝に圧迫されて捻出できず、12月は日払いのバイトを可能な限り掛け持ちして金を貯めていた。それでも11月分にあと1万2千円がどうしても足りない。12月分に至っては目途すらついていない。

ポルカは、今日中に1万2千円を調達して、26日朝イチに大家に振り込まなければ、家賃を2か月分滞納したかどにより、1月から住む場所が無くなる。それはポルカの夢の終わりを意味する。


7時間前に売り始めた時には、あんなにいた人が、もう数えるほどしかいない。「0時30分までに帰ってこい」と言われている。なるほど、これから粘ってもケーキは売れないだろうし、むしろ生ものは傷んでしまう。

ポルカは、荷物をまとめてその場を立ち去らざるを得なかった。



 カランカラン

CLOSEDが掲げられた店の扉をくぐる音も、今日のポルカにとっては自分を責めるような響きを感じさせた。

「おう、戻ったな。ケーキは売れたのか?」

ポルカは、予想はしていたものの、その言葉に肩をこわばらせ俯いた。

店内を片付ける店長は、まだ店内にいた。日付も替わった店舗には、他に誰もいない。当然ながら店舗でもケーキを売っていたが、他の従業員は23時までに全員帰った。

「おい、ケーキは売れたのか」

店長は、念を押すように繰り返す。

ポルカは、売上金とお釣り入れと持ち出し帳簿を店長に渡した後、店の玄関に隠すように置いておいたケーキを、怖ず怖ずと手繰り寄せた。

「ひぃ、ふぅ、み、…、…」

店長は売れ残ったケーキの箱の数を数え始めたが、数え上げるたびに声が小さくなっていき、ついに無言となった。

「……あの、……あの、……」

ポルカは、体の向きこそ店長の方に向けていたが、顔を上げることはとてもできなかった。売れなかったのは事実だし、もはや申し開きをする余地は無い。


「バイトぉ!!お前、売ってこいっ言(つ)ったのは25個だったよなァ!!なんで11個も売れ残ってやがるんだ!!」

「はいぃ……」

店長の怒号が響き渡る。

今年のケーキの売り上げは、ただでさえ不振であった。ポルカに持たせたケーキ以外にも、店舗売りの分でいくらか売れ残りがあり、それは店舗で業務をしていたバイトに持ち帰らせていた。


「なんで売って来ないんだ!!おい!?11個も、どうしろって言うんだよ!!!?」

「はいぃ……」

本当は店長も、自分で何を言っているのか論理的な思考ができていない。売れなかったものは売れなかった、それ以外なんでもない。しかし、店の経済事情も手伝って、つい怒鳴り声が出てしまう。

ポルカは、自分の責任を思い、何も言えない。声が震える。

「うぅ……すみません……」

「3,500円のケーキだぞ!!25個、9万円入る前提で、店をやってんだ!ここに11個も残ってたら、4万円も足りないんだぞ!!お前の今日の日当の5倍だ!意味わかってんのか!!?」

「ひぐっ……ずみ……すびばせ……」

「てめぇ!!泣いて4万円できるなら俺はいくらだって泣くぞ!!お前!!!?」

「はぃぃ……」

泣きたくて泣いているのではない。自らの力不足と、金銭的な不安とで圧し潰されて、体から水分が絞り出されてくるのだった。

ポルカには、もはや何の策も無い。深く深く首を差し出して、目頭から逆流して鼻梁から伝わる涙を、床にぽたぽた垂らすことしかできない。



 30秒ほど、ポルカには永遠とも思われる長さの沈黙が過ぎた。

店長としても、どれだけ怒っても金が出てくるわけではない。怒りも、時間によって減衰していくものだ。

「はあ……仕方ないな……。お前は今日の日当持って、さっさと帰れ。俺は片づけをするから」

店長はポルカを睨めつけるのをやめて、工房の方に戻って行こうとした。

「てん…店長!!」

ポルカは、しかし、怒られて終わりではない。頼れる人がいない。今のところ、この店長しかいないのだ。

「何だ、ケーキなら持って帰っていいぞ。2つでも3つでも」

「その……」

ポルカは、俯いたまま崩れ落ちるようにその場にうずくまった。

店舗の中央のテーブルに置かれた給料袋には、「尾丸 8,000円」と書かれている。

「店長!!!!4千円貸してください!!!」

絞り出すように叫んだ。

ポルカには、ここでしか、金を調達する手段が無い。ケーキは25日は委託分のみなので、店舗は休みである。今日ここで、店長に頼むしか、ポルカのできることは無い。


店長の顔が、再び険しくなっていく。

「はあ……?お前、何言っているんだ?」

「来月には必ず返します!!家賃がたり……足りなくて……!」

「お前は!!ただでさえ4万円の損害出しておいて!!日当分だけじゃ足りなくておかわりってかァ!!??」

「すみません、本当に……でも、本当に、お願いします……」

「ずいぶんとわがままお嬢ちゃんだなあ!!?おじちゃんが何でも買ってあげようか!!!?あぁ!!!!?」

「すみません、すみません……」

いよいよ店長の声は怒りに震えてきた。

ポルカは店長の靴を前に、額をタイルの床にこすりつける。踏みつけられてもいい、蹴られてもいい。何を犠牲にしても、しがみつかなければならない。



 「尾丸」

一転、店長は静かな声で伝える。

「顔を上げろ、尾丸」

ポルカは涙と鼻水が鼻筋のところで混じり合った汚い顔を店長に向けた。

店長は、真剣な、しかし穏やかな目をしていた。

「俺は18の時にケーキ修業を始めた。その時にお前と同じことをした。お前には、夢が、あるんだな?」

「は……っあ゛い!」

ポルカはぐちゃぐちゃな顔で、しかしこの世で最も美しい瞳で、店長を見つめて応えた。

「わかったよ」

店長は自分の財布を取り出し、紙を1枚差し出して言った。

ポルカは、それを、うやうやしく両手で受け取る。

「最初で最後。1万円だ。お前の夢を応援する。とっておけ。出世払いだ」

「あり……ありぎゃふほざいます!!!!」

ポルカは再度、額を床に叩きつけた。



 クリスマスイブは終わった。世間のカップルは幸せを享受し、小さな子供は期待を胸に眠るだろう。

ポルカは、なんとか調達できた先月分の家賃を大事にしまい、ケーキをカゴに3個も積んだママチャリで帰路についた。

白い息を細く吐く。ポルカは、さっきまで過度の緊張に晒されて感じていなかった寒さを、ようやく意識し始めた。冬至からほんの2日である。雪こそ降っていないものの、寒風吹きすさぶ真冬の空気は、ポルカの体温を確実に奪っていた。貧乏な身で、マフラーはボロボロ、上着も薄いものしか羽織っていない。

ポルカは、情けをかけられたものの、孤独であった。不安とストレスと空腹と寒さは相乗され、ポルカの体力と集中力を削っていく。歯がかみ合わない。


「はぁ…っくしょん!」

交差点を通り過ぎるときに、ちょうど、くしゃみが出てしまった。横断歩道から歩道に乗り上げる瞬間、自転車が揺れて、前カゴに載せていたケーキが1つ、右方の車道に転がり落ちた。

「あぁっ!」

ポルカはとっさに右手を伸ばしてケーキを落とすまいとした。しかしその手は空を切り、逆に自転車はバランスを失い、段差で揺れた衝撃で2つ目のケーキが左方に飛び出した。

ポルカは混乱して両手をハンドルから離してしまった。今度こそ操縦を失った自転車は縁石に衝突し、前のめりに転倒した。ポルカは体を投げ出され、受け身も取れずに顔から道路に叩きつけられた。しかし、幸か不幸か顔面はちょうど投げ出された3つ目のケーキに突っ込んだので、切り傷を負うことはなかった。

周りには誰もいなかった。助け起こしてくれる者も、心配してくれる者も。ポルカは、無言で立ち上がった。自身のけがが大したことがないことを確認すると、無性に腹が減ってきた。3つ目のケーキは、自分の顔と体でぺちゃんこになり、2つ目のケーキは自転車の後方にあった……ど真ん中に自転車のタイヤ痕が残っている。最初に投げ出されたケーキの箱は車道に、あっ、たった今乗用車に踏みつぶされた。



 「うぐ、えぐ、えっ……」

ポルカの目から止め処なく涙が噴き出した。

人生って、こんなにつらいものだったっけ。

しかし、お腹がすいた……

ポルカは、3つ目のケーキの箱の中身の、まだ食べられる部分を手ですくって口に押し込んだ。


----------ケーキ要りませんか?甘くておいしい、クリスマスケーキだよ。


ポルカはその味を堪能することはできず、しょっぱいイチゴと砂利混じりのスポンジケーキを夢中で食べていた。12月25日午前1時30分のことである。



メリー、メリークリスマス。

あなたに、主の加護があらんことを。




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なんか、書いててすごくつらくなってくるんですけど。

まあこのつらい経験の後、修行が実って、夢をかなえつつある、って所でお許しください。


2021年11月4日木曜日

ホロライブの二次創作設定1(わたしし)

  ホロライブを見ていて・他人の妄想を聞いていて、設定や物語を進めて他人にも共有するのが楽しいので、成形前の設定段階ですが、いくつかここに書き留めておくことにします。

 最初に開陳するのは「わたしし」。二次創作界隈では、「×」の左側は攻め(タチ)、右側は受け(ネコ)を表すというルールがあります。それに則ると、この妄想は「わたしし」です。「ししわた」はぼたんのデビュー前から盛り上がっており、ししわた最初のコラボでもとりあげられ人気のカップリングです。しかし、それの逆カプはほとんど見ません。無ければ作ればいいんだよなあ!



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わたしし妄想


前提1:ぼたんとわためはししろフーズの社員寮にて2人で暮らしています。

前提2:ぼたんはギャングタウン出身で過去に色々ありました。



ぼたんは時々、不眠になる。忘れていたはずの過去の記憶が、ぼたんを安眠から引き戻す。

様々な脅威から逃げて、時には立ち向かわなければ生き残れなかった。

強大で足がすくむような相手、恐怖が脚を揺らした。

敵の弱みにつけこむために、弱い者を虐げた。

そうして恨みも多く買った。自分は突然殺されてもしかたない人間だ。

何度か寝首をかかれそうになり、死線を何度かくぐった。

ぼたんが今生きているのは、幸運か、悪運か。




ぼたんが脂汗と共に飛び起きると、そこはししろフーズ社員寮だった。

深夜にもかかわらず、わためが静かな瞳でぼたんを見つめる。

「寝顔、苦しそうだったよ。ぼたんちゃん、怖い夢見てたの?」

ぼたんはずっと不思議だった。

わためは、何度もぼたんに怯えさせられているのに、ぼたんと一緒にいる。

かなた先輩やココ先輩などと一緒に行動することもできるのに、わざわざ自分といるのはなぜ?

「ぼたんちゃんって、なんだか、放っておけないんだあ」


ぼたんはたまらず涙をこぼした。

これまで誰にも言えなかったこと、たのしくない思い出、きれいでない経験。

ラミィやねね達には、決して言えなかった。彼女たちのような明るい世界の者に、自分の汚い世界を押し付けてはいけない。

でも、わため先輩なら、ふわふわな綿毛で包んでくれると思った。どんなに不快なことでも、わため先輩は、信用できる。


信じたい。





ぼたんちゃんは、ぼたんちゃんでいるだけでいいんだよ。

ぼたんちゃんは、責任感が強いから、がんばっちゃったんだねぇ。

人間って、大変だよねぇ。

生き抜くだけで、いろんな人に迷惑かけたり、叩かれたりして、人間でいるだけで、疲れちゃうよね。




だから、わためぇが、ぼたんちゃんを人間で無くしてあげるね。




わためぇといるときは、ぼたんちゃんは誰も傷つけないし、誰からも傷つけられないよ。

説明しなくてもいいし、本当のことを言わなくてもいいんだよ。


わためぇといるときは、いつでも、人間、やめていいよ。

わためぇはね、ぼたんちゃんが、人間やめたら、かわいいと思うな。

頭、なでてあげる。お尻、触ってあげる。

あっ、喋っちゃだめだよぉ。ぼたんちゃんは、今は人間じゃないんだから。

わためぇの胸でおやすみ……




ぼたんは、ほとんど生まれて初めて、帰るべき家を持った。

建物の家ではない。わためといると、素直な自分、自分の全てを知った上で許される。

他人と会うときにはいつも通り。長年しみついた警戒や猜疑が頭をもたげる。

わためといるときは違う。人間でいることを捨て、罪という罪、責任と言う責任を全て肩から下ろし、裸でいられる。

帰ってわために一言伝えれば、ぼたんは理性から離れられる。

わためはぼたんの心のよりどころになった。




ぼたんは、家でわために甘える時のスイッチがほしくなった。

さすがに料理をしたり出かける直前までわために甘えっぱなしというのは難しい。

ふと、街中で目に留まったのは、太く丈夫な首輪。非常に大型の犬用であってヒト用ではない。

それをつければ、ヒトをやめられる。わために甘えられる。


気づくとペットショップに入って、無骨な見た目の首輪を手に取っていた。

わため先輩は、似合うって、言ってくれるかな。気持ち悪いって、言われたりしたらどうしよう。

わため先輩を、信じたい。

不安より期待が勝って、買ってしまった。


押しつぶされそうなほど不安で、言葉に何度も詰まって、わためにお願いをした。

そんな気持ちとは裏腹に、わためは簡単に「可愛いねぇ。いいよぉ」と快諾してくれた。

それがもう、嬉しくて、嬉しくて。ぼたんはわための飼い猫になった。



翌朝。

もう出かけなければならない時間。わため先輩に褒められた首輪は大好きだけど、さすがに外にまでつけていくわけにはいけない。

自分はいい、どんな目で見られても構わない。しかし、何かの拍子で、わためまで奇異の目で見られるのは死んでも嫌だ。

「ぼたんちゃん、首輪は、ぼたんちゃんだと思って、わためぇが大事に持ってるからね」

わためは、ぼたんを所有してくれるという。なんと満たされる言葉だろう。




ぼたんが用事を済ませて帰ってくると、わためがにこにこしながら待っていた。

「本当なら、飼い主のわためぇが、ぼたんちゃんの首輪を買うのが本当だったけど、賢いぼたんちゃんに先越されちゃったぁ。お詫びに、外用の首輪、買ってきたからねぇ」




ラミィ「あれっ?ししろん、そのチョーカー、可愛いね」

ぼたん「おっ、気づいてくれた?わため先輩がくれたんだあ」



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 某絵師に布教されて妄想しました。ししろんが受けというのは少し難しかったですが、ぎゃんぐたうんちほーから来たという設定から、あまりひねらずに作りました。


 ししろんがぎゃんぐたうんちほーで何をやってたかは、説明できていないのですが、最低でも強盗はしているし、相手にけがを負わせるくらいはやってないと、この話の前提が満たせません。ししろんが人を殺した経験があると、話の展開が非常にやりやすくなり、わためぇへの依存も高めることができます。しかし、僕は創作の中では可能な限り人を殺したくないので(話が安直になりすぎるから)、悩みどころ。


 イメージしたのはタロットカードのstrength(力)。

 見てのとおり力の象徴であるライオンを、女性が手なずける絵です。ライオンはそのまんまししろん、女性はわためです。strengthが象徴するのは精神力、忍耐、勇気など。わためはししろんの過去を受け入れる勇気・精神を十分に備えているし、それを信頼するししろんの姿はタロットのライオンのように満ち足りた心持ちでありましょう。

2021年9月22日水曜日

日本のアイドルといえば源九郎義経。

 昨日投稿した記事について、全くTwitterへ告知しなかったので、狙い通り閲覧数が増えなくて良かった。

このブログの主な利用方法は、Google+の投稿やtwitterのtweetを保存するために移記すること。今回はアイドル論。


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 俺は、アイドルが「不完全」なのは昔からだと思っていて、それは日本特有のものではないかと考えている。

日本のアイドルといえば誰か?沢田研二?松田聖子?バカ言え。


源九郎義経だ。


義経は強かった(平氏討伐の総大将)。

しかし、頼朝と対立して討たれてしまう。


 日本人は、大成功したヒーローよりも、哀れな散り際のアイドルを好んだ。

「ここが、こうなってれば……」「もしも、彼がこうしていれば……」そういう想像をさせる、切ないストーリーが、アイドルを引き立たせる。

「不完全」なアイドルは、この需要に十分に応えるものだ。


https://twitter.com/nattosansai/status/1389230063766233091

https://twitter.com/nattosansai/status/1389230065754333185


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 アイドルの不完全さについては、かなり考察を進めている。

アイドルは歌がへたくそで、ダンスもどんくさく、大して可愛くもないのに、なぜステージに立たせるのかという話だ。

それは、日本人が「ストーリー」大好きだからだと考える。

ストーリーは始まりがあり、終わりがある。

平家物語のように、平家や義経の切ない終わりが、日本人に刺さったのである。

アイドルと義経の共通点は、「弱い」「不完全」ということだ。


 不完全な者が、試行錯誤・切磋琢磨しながら、強者に立ち向かうストーリーが日本人に受けるのである。

もしも、強者に勝ってしまったら、そこでストーリーは終わってしまう。だから、デビュー時の能力は「低い方がいい」。

僕らはそのストーリーにこそ、金を出す価値があると信じている。