以下は2018.7.26~2018.7.30のpostの転載です。
隣課の女子(5)
第二夜(歌編)
「昨夜はカラオケに行ってきたんですよ」
定時直後、再び瑞穂さんの席の付近に陣取った僕は、少し異なる話題を振ってみた。
「まあ、一人なんだけどね」
「どんな曲歌うんですか?」
反応も返ってくる。悪くないぞ。
「基本的にはアニソンかな。あと、唱歌とか」
「唱歌?」
「『山はしろ~がね~、朝日を浴~び~て~』........あれっ?知らない?」
「ちょっと聞いたことないです...」
正直、「スキー」はマイナーな方だし、ここは「知らない」という反応を期待してたから、驚かない。
「えっと、『春~は名~のみ~の~』……おっかしいなあ」
「ちょっとわかんないです(苦笑)」
「じゃあ『春高~楼~の~』」
「それは知ってます、教科書に載ってました」
「そうだよね、教科書に載ってる感じだよね」
ボールを投げるのはここだ。
「瑞穂さんはカラオケ行くの?」
「そうですね、みんなで行ったり、一人で行ったり」
「そうなんだ!カラオケに一人で行く人って多くない印象だけど。僕も基本一人だけどね」
大学時代は近所にカラオケ屋があり、暇があれば通ってたらしい。また、歌う曲は普通に流行曲が主。
「えっ、国歌なんて、カラオケに入ってるんですか」
「そうそう、DAMは少ないけど、Joyにはいくつか」
「国歌って面白いんですか?」
「何だって、詳しく調べれば面白いよ!国歌はねえ、オランダの国歌なのに『スペイン王に忠誠を誓う』って言っちゃったり、『フランス出てけ!』(アルジェリア)って言っちゃったり。具体的な歌詞が面白いよ」
「へえ~」
「翻訳するのめんどくさいけどね」
わりと長く国歌の話を聞いてもらった。
「アニソンでは、結構、アニメのタイトルが歌詞の中に出てくる歌が好きだね」
「私もアニソンとか、仮面ライダーとか歌いますよ」
マジか。ナナシス好きというあたりから、ライトオタなのではないかと思っていたが、実際にそうなのね。
「僕は『赤い、赤い、赤い仮面の”V3”』とか歌うね」
「私は平成ライダーです」
「僕も、『それが、君の”響鬼”』とかなら。」
第二夜では、カラオケの話が主であった。
瑞穂さんの高校時代の友人の話もあったが省略する。
隣課の女子(6)
第三夜(車編)
「浜松に行ってきたので、おみやげ配ります」
エアーパークオフ会の翌々日、おみやげを配りながら瑞穂さんの席に近づいた。わりと近しい内容の仕事をしているので、僕はおみやげを配るときには近隣課30人全員に配るようにしている。もらって嫌な人はいないだろうしね。
「伊久さん、どこ行ってきたんですか?」
「浜松のエアーパークってとこです。あとさわやか」
「飛行機の絵が書いてますね」
「航空自衛隊の基地のひとつなんですよ」
ネタがあると、中村さんも話しやすい。
「こんな感じで実機が保存されてて」
「へ~でっかい」
何気なく、例によって展示格納庫の写真を見せたときであった。
瑞穂さんが、少し前のめりになってのぞき込んできた。
「あ、瑞穂さんも見ます?これ航空自衛隊の基地」
瑞穂さんが興味深そうに見ている。これは.......「あたり」か?
そこへ、近くを僕と同じ課の中川が通りがかった。渡りに舟。
「あ、ちょっと、中川君来て」
「自分ですか」
中川はライトなミリオタで、例えばガルパンは戦車目当てで見ている。僕とは観点が違うねと言って話している相手だ。
「ここ行ってきたんだよ。ホラ零戦」
「ほ~!これは面白いですね!」
「そうなんだよ!色んな角度から見られるからさあ」
中川は普通に話しやすい、若手の男性社員だ。守山と同じ世代。
なお、「零戦」の発音は「れいせん」である。「ゼロ」と言い始めたらちゃんと「ゼロファイター」と言わねばならない。
「中川君は、“専攻”は車なんだけど、ミリ関係も行けるんだよね」
「そうです。バイクも良いですよ。昨日はツーリング行ってきました」
そう言ってカワサキ製のスゴイデカイバイク(名前とかは忘れた)の画像を見せた。2人で行ってきたらしく、2台並んでいる。
そのときだ、瑞穂さんの目つきが変わったのは。
隣課の女子(7)
瑞穂さんは、カワサキのニンジャさんに、これまでにない食いつきを見せた。
「うわ~!かっこいいですね!」
「かっこいいんだよ!」
中川はとても誇らしげだ。ニンジャ強い。そうか瑞穂さんはクルマ関係が好きでしたか。
ふと、急に、中川は何かに気づいたように体を引き始める。
「...あっ、すみません、お邪魔でしたよね?」
「えっ、邪魔じゃないよ?」
お前は餌だよ。
「でも、あのお話の邪魔してないかなって」
「いやいや、座れって」
「でも、これナンパ?ですよね」
あ~、確かにナンパに見えるよね。
「ナンパだよ」
変に飾るより、冗談めかしてナンパだと言い切ってしまった方が良い。
「でも、まあ座れよ」
中川を会話に引き戻した。
中川のバイクトークにて、どこにツーリングに行くとか、走り屋かどうかはツーリングに行く人かどうかが重要なんだとか、どうでもいい話を聞いた。たぶん僕にとってはどうでもいいんだけど、瑞穂さんは興味津々な話題だろう。
でも、瑞穂さんは車通勤ではなかったような気がする。電車の時間を気にして帰ってたような。
「瑞穂さんは車持ってるんだっけ?」
「いえ、車持ってないので」
「何か、『これ欲しい』って車はあるの?」
「ええと......とりあえず乗れれば良いかなって」
「そうだよね!エブリィは良いぞ」
僕の”隙あらばエブリィ推し”が炸裂。
隣課の女子(8)
エブリィ推しは、半分本気だけど、話を引き出しやすくするための枕だ。
「ええと、乗るやつじゃなくても良いですか?」
怖ず怖ず、という感じで瑞穂さんが語り始める。歓迎ですよ。
「『カマロ』っていう車が好きで」
知らない車出てきた。
「ほお~!?カマロ!良い車だね」
中川は知ってるのか。
「『トランスフォーマー』って映画知ってます?」
「アニメしか知らない......特撮の方?」
「そうです」
ぐぬぬ。
「黄色のカマロがかっこよくて良いんです!『トランスフォーマー』見てください!」
お、おう。わからん話題だけど、瑞穂さんから話が出てくること自体は良いことだ。
「中川は見たことある?」
「見てないです」
「瑞穂さん、『トランスフォーマー』はどういう映画なの?」
「車が変身する映画なんですけど、あんまり深く考えなくていいヤツです」
なるほどね。
「『車かっこいい!』『豪華!』って言って見てりゃいいヤツか」
「そうです!」
頭使わずに見ろということね。
その後は、特撮繋がりでしばらく戦隊ヒーローものと平成仮面ライダーの話をした。このへんは一通り履修してるようで、例えば「今の戦隊ものはどんな話?」と聞くと「敵と、パトレンジャーと、ルパンレンジャーで、三つ巴な感じです」とすぐ返ってきた。合ってるかどうかは不明。
そういや、「金曜にテレビで毎週『トランスフォーマー』の映画やってる」って言ってたけど、いつやってたのだろう。僕が気づかなかったのか?
第三夜では、とりあえず瑞穂さんが特撮好きということまでわかった。そりゃあ、基本リア充の中村さん・千種さん・守山君とは話合わないはずだわ。
隣課の女子 第零夜~第一夜
隣課の女子 第二夜~第三夜
隣課の女子 第四夜
隣課の女子 第五夜~第六夜
隣課の女子 第七夜~第九夜
隣課の女子 第十夜~第十一夜
隣課の女子 第十二夜
隣課の女子 第十三夜~最終夜
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