第十三夜(バンブルビー編)
3月25日(月曜日)、僕は先週と同様に瑞穂さんの席へ向かった。週末にバンブルビーを見たはずなので、その感想を交換するためだ。
「仕事したくないです(挨拶)」
「伊久さん」
「バンブルビー見てきましたか」
「もちろん!」
今日は、実はバンブルビー以外にも話すことがあるのだが、とりあえず先に映画の話題。
「元の設定では、カマロ?だったみたいだけど、ビートルのバンブルビーはどうだった?」
「ビーちゃん可愛かったですよね!!!!」
勢い自重。
「ああ、可愛かったね。カマロだとスーパーカーだけど、ビートルだと可愛い系だよね」
「そうですよね~……はあ……(幸せなため息)可愛かった……」
瑞穂さんキャラ変わってない?
「変身…変形?するときのガチャガチャしたのはしっかり描かれててよかったよね」
「そうですね。ビーちゃんは車の時は可愛いけど、変形したときの凛々しい姿はカッコよかったです。もう…全画面可愛かった!」
「あはは、全シーンの全てのバンブルビーが?」
「そうです(力説)」
「目の上の、ホース?みたいなのが、ちょうどよく眉の役目を果たしてて、しょんぼりしたときには垂れてきて人間みたいな表情になるのが面白かったね」
「有ると無いとでは全然違いますね。あと、調子のって車壊しちゃう所とかも可愛かったですよね」
「ああ、跳び跳ねてたよね」
「そうですね……(しみじみ)」
好きなことだと饒舌。オタクの宿命ですね
隣課の女子(33)
もう少しバンブルビーの話を続けます。
「あの、男の子…メモ君?あれは、最後手くらい繋いでくれてもいいと思ったけど、どう?」
「いえ、あれはあれでいいんです。色恋沙汰で時間使うくらいなら、同じ時間でビーちゃんとチャーリー(主人公)を映してほしいんで」
がんばれ、メモ君……
「ラストでは、そんなことより、あとほんの数時間早く、コンボイ司令官が到着してくれたら、敵を華麗にやっつけて終われたのにって、そればかり思ってて」
コンボイ……赤くて四角い奴か。
「まあ、『ひとりでできるもん』というか、『はじめてのおつかい』的なやつでは?」
『はじめてのおつかい』感はありましたね」
「こんにちは~」
中川が登場。
「中川は車好きだよね。車が好きなら、車が可愛いっていう感覚はわかるよね」
「えっ?」
「今『バンブルビー』っていう『トランスフォーマー』のスピンオフの映画の話してて。ビートルは可愛い、ロボットも可愛い。可愛いプラス可愛いで、超可愛いんだよ」
「そうです!そしてラストにはカマロに戻ってました。カマロはカッコいい、ビーちゃんは可愛いので、ギャップ萌えなんです」
「一粒で二度美味しい映画だったよね」
「ですね」
「ちょっとよくわからない」
中川にはロボットものは響かなかったようだ。
中川が瑞穂さんの席に来たのは、(32)で紹介したとおり、他にも話すことがあるからであった。
年度末の折り、残り1週間を待たずに、「隣課の」女子ではなくなることがわかるのが、3月25日というタイミングである。
第十三夜(バンブルビー編)終
隣課の女子(34)
最終夜(年度末編)
うちはまあまあの大企業なので、異動が結構頻繁にある。5年に一回くらいかな。僕は今の職場になって4年なので、そろそろ異動と思ってたところ、出先機関への出向が決まった。
それら全社員の異動先が、25日の16時頃発表された。
そして、瑞穂さんの欄には、「退職」と書いてあったのだった。
「僕は瑞穂さんの異動について話に来たんですけど、映画の話になってるんですか?」
中川君の困惑もごもっとも。ただ、僕は他人のプライベートにはあまり興味ないんで。
「はい、豊田市の会社に行きます」
また遠いところですね。
「と、いうと、トヨタ?」
「そんな、滅相もない、でも関連会社です。完全子会社の」
「やっぱり、車で通うの?」
「そうですね、車買って車で通うつもりです」
現在瑞穂さんは車を所持してないので、バス通勤。
「どんな車を買うの?」
「最初の車は、どうでもいい車にしようと思ってて。絶対に擦るので」
気持ちはわかるが、よく見るyoutuberは「最初に一番欲しい車を買え」って言ってたけどな
「じゃあ、しっかり車買うのは、お仕事でお金ためてからだね」
「そうですね」
色々あって、26日から28日は忙しく、隣課に行く機会無し。
29日には、課ごとで異動の挨拶が行われたが、隣課との絡みはなかった。
僕は異動対象だったので、引っ越しで忙しく行けなかったが、中川は隣課に顔を出しに行ったようだ。
今回で「隣課の女子」は終わりです。僕も瑞穂さんも、課を大きく離れてしまうからです。
特に進展もなかったですが、仲良く会話ができたし、瑞穂さんのコミュニケーション能力の向上に寄与できたと信じることで、めでたしめでたしとします。
また次の機会がありましたら、「隣課の女子」リターンズを書きますが、それは何年も先のこととなるでしょう。
Google+の終了とともに。
隣課の女子 第零夜~第一夜
隣課の女子 第二夜~第三夜
隣課の女子 第四夜
隣課の女子 第五夜~第六夜
隣課の女子 第七夜~第九夜
隣課の女子 第十夜~第十一夜
隣課の女子 第十二夜
隣課の女子 第十三夜~最終夜
ありがとう
返信削除そしてありがとう
楽しんでいただけたのなら、幸いです。
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